中国特許民事訴訟概説(第3回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許民事訴訟概説(第3回)

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中国特許民事訴訟概説 ''〜中国で特許は守れるか?〜''(第3回) 
河野特許事務所 2008年8月29日
執筆者:弁理士 河野英仁、中国弁理士 張   嵩


(3)長所と短所
 特許侵害に直面した場合,行政アプローチと司法アプローチとのどちらを採るべきか問題となる。行政アプローチのメリットは短時間及び低コストでの解決が可能であるという点にある。短所としては,侵害行為の差し止めしか行わず,損害賠償請求については調停による場合を除きこれを認めていないという点にある。また,複雑な権利範囲解釈が要求される事件は行政による判断よりも,裁判官による判断を経るべきものと思われる。従って,明らかな侵害行為で,迅速な差し止めが必要とされる場合を除き,原則として司法アプローチを採ることが好ましい。   
(4)近年の利用状況
 図1 は行政アプローチ及び司法アプローチの特許事件受理件数の変化を示すグラフである。

図1 特許侵害事件受理件数の対比

 WTO 加盟後の001 年から007 年までのデータであり,三角は司法アプローチ,四角は行政アプローチの受理件数である。以前は司法及び行政の受理件数はほぼ同数であったが,近年は司法アプローチが増加し,逆に行政アプローチが減少傾向にある。これは,人民法院における知的財産権(以下,IP)部門の拡充及び事件の複雑化に起因するものと考えられる。事件の性質にもよるが今後は,司法アプローチによるのが賢明かと考えられる。

3.人民法院のシステム
(1)人民法院の構成
 日米と比較した場合,中国の人民法院は基層,中級,高級及び最高の4 層構造を取る点で相違する(人民法院組織法第2 条並びに第18 条乃至第33 条)。北京にある最高人民法院を中心に,各省・直轄市等を含め31 の高級人民法院,300 以上の中級人民法院,3,000以上の基層人民法院から構成される。
(2)知的財産権を取り扱う人民法院
 ではこれらの人民法院のうちどれだけの人民法院がIP を取り扱うことができるのだろうか。1996 年にはIPR(Right)保護の高まりを受けて最高人民法院にIP の専門部門が設置された。IP 部門は特許等の技術的事件を取り扱う第1 部門と,商標等の非技術的事件を取り扱う第2 部門との二つにより構成される。最高人民法院が専門の部門を設けていることには驚かされる。高級人民法院は上述した31 の法院全てがIP 事件に対応可能であり,中級人民法院は172 の人民法院が対応可能である。特許事件は技術的知識が必要とされるところ,全ての高級人民法院が特許部門を設けており,また中級人民法院においても64 の法院が特許事件について対応可能である。
 なお,裁判管轄の項で説明するが,IP 事件は原則として中級人民法院が第1 審となるため,基層人民法院にはIP 部門がほとんど設けられていない。
(3)知的財産権専門の高級人民法院の設立
 米国では連邦巡回高等裁判所が1982 年に設立され,日本においても2005 年に知的財産高等裁判所が設けられ,高等裁判所レベルにおいて統一的な判決を受けることが可能となった。中国では31 カ所の高級人民法院がそれぞれ別々に判決を出している状況であるが,米国及び日本と同じく知的財産専門の統一的な高級人民法院を設立すべく,現在,研究及び準備がなされている。

(第4回に続く)
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