あちらを立てればこちらが立たず・・。 - 住宅設計・構造全般 - 専門家プロファイル

杉浦 繁
Atelier繁建築設計事務所 代表
愛知県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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あちらを立てればこちらが立たず・・。

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なんじゃこの天候は?・・3

 

 


昨今は家を建てるのにも今までとは違う建て方が必要になってきています。

 

それは・・

水です。

今の家は水に対応しなければなりません。

 


何も川のそばの土地であるとか0m地帯に建てるなんてことがなくても・・

今やどこに建てるのであっても家が水につくかもしれません。

津波だって冗談ではなく起こりうると言うことを嫌と言うほど思い知らせれました。

 


町中であっても都会であってもどこでもです。

 


ゲリラ豪雨が発生して短時間であっても1時間に100mmなんて雨が降れば、どんな排水能力をもっている都会だろうと対応することなど不可能です。

行政の対応が悪いとかいくら文句言ったって、そんな降水量に都市機能として対応することは物理的に不可能です。

 


手があるとすれば・・

そう何も建てないこと、山や森のままにしておくことでしょう。

 


つまり・・

いつあなたの家の前が濁流になってもおかしくないということです。

 

 


実は・・

この水に対応する家や建物を建てるということは対応策としてはそんなに難しいことではありません。

 


床上浸水を回避するのには・・

ようするに・・

床を高くすればいい・・

だけのことです。

 


これで床上浸水は想定値以上の水が来ない限りは回避できます。

 


が・・

対応策としては簡単なことなのですが・・

実際にこれを行うことは非常に難しいことなんです。

 


なぜか?

それは床を高くすると言うことはバリアフリーにはなり得ないということだからです。

スロープを設置できるスペースのある大きな建物以外ではなかなかに難しい・・

 


たとえば・・

道路から平らな敷地だとすると木造住宅の建築基準法上の推奨基礎高は45cmですが、これでは水が着くかもしれなくて不安なので60cmにしようとしますと・・

バリアフリー法上のスロープの最大勾配は1/12ですので、スロープの長さは7.2m必要になります。

まあ、このスロープは車椅子で自走可能な勾配ですから、そこまでは必要ないとしても4~5mは必要でしょう。

 


住宅であれば相当に広大な敷地を持つお金持ちのお宅や田舎でなければかなりの設計力で設計しない限りまず無理です。

 

 


そこで・・

床上まで水がきたらもうしょうがない、せめて床下浸水までは防ぐ・・

これは、そんなに難しいことではありません。

きちんと設計・施工をしていれば・・

 


まずプランで家の中で外につながる低い部分を玄関だけにする。

これはたいていの住宅はそうでしょう。

地下などは設けてはいけません。

 


それから基礎立ち上がりコンクリート途中の開口部をなしにする。

つまり・・

床下換気口などはつけずに床下通気は通気パッキンなどで行うようにする。

 


さらには・・

基礎立ち上がりのコンクリートを確実に防水ないしは止水する。

 


これで、玄関ドアを閉めれば床下に水ははいりません。

 


これらは、本当は当たり前なことなのですが実際には当たり前ではありません。

基礎の防水や止水まできちんとしている住宅というのはまだまだ少ないのが現実です。

 

 


建築というのは本当に難しい。

ハードでつまり建材や設備で対応できることは簡単なのですが・・

ようするにその建材を付ければいい設備を使えばいい。

 


しかし、ハードだけでは対応できないことにはソフトで対応しなければなりません。

つまりプランニングや設計でです。

 

 


あちらを取ればこちらがたたず・・

難しいところなのです。






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