建築士に関する最高裁判例 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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建築士に関する最高裁判例

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建築士に関する最高裁判例


 損害賠償請求事件 (建築確認構造計算書偽装事件)
 平成25年3月26日  最高裁判所第三小法廷  判決
 棄却 、 裁判集民事 第243号101頁
【判示事項】
 1 建築士の設計に係る建築物の計画についての建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合
2 一級建築士により構造計算書に偽装が行われていた建築物の計画についての建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとはいえないとされた事例
【裁判要旨】
 1 建築士の設計に係る建築物の計画についての建築主事による建築確認は,当該計画の内容が建築基準関係規定に明示的に定められた要件に適合しないものであるときに,申請書類の記載事項における誤りが明らかで,当該事項の審査を担当する者として他の記載内容や資料と符合するか否かを当然に照合すべきであったにもかかわらずその照合がされなかったなど,建築主事が職務上通常払うべき注意をもって申請書類の記載を確認していればその記載から当該計画の建築基準関係規定への不適合を発見することができたにもかかわらずその注意を怠って漫然とその不適合を看過した結果当該確認を行ったと認められる場合に,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
2 一級建築士により構造計算書に次の(1)ア~ウの偽装が行われていた建築物の計画に係る建築主事による建築確認は,次の(2)ア~ウなど判示の事情の下においては,国家賠償法1条1項の適用上違法となるとはいえない。
(1)ア 開口部が広くつなぎ梁がぜい弱である耐震壁につき,本来の2枚ではなく1枚の耐震壁としてモデル化して応力の計算がされていた。
イ 1階の剛性率は,10分の6以上ではなかったのに,10分の6以上とされていた。
ウ 耐力壁の断面の検討における設計用せん断力につき,当該構造計算書で用いられている国土交通大臣の認定等を受けたプログラムによる応力解析結果と異なる何の根拠もない数値が手作業で入力されていた。
(2)ア 当時の建築基準関係規定には,建築物のモデル化の在り方や内容に関する定めがなかった。
イ 1階の剛性率は,適切な入力データに基づき上記プログラムにより計算された結果として記載されていた。
ウ 国土交通大臣の認定等を受けたプログラムは100種類以上あってその種類や追加機能の有無により手作業で入力すべき項目の範囲等が多種多様である上,当該構造計算書における上記プログラムの出力結果は膨大なものであり手作業で入力された数値も相当多岐にわたっていた。
(注) 剛性率 :地震荷重に対して求められる層間変形角の逆数を各階の層間変形角の逆数の全階にわたる平均値で除した比率
 せん断力:部材等の断面に作用する応力のうちその断面の両側を相互に逆方向にずれさせるように働く力
【参照法条】
 建築基準法(平成16年法律第111号による改正前のもの)6条1項,建築基準法(平成18年法律第92号による改正前のもの)6条3項,建築基準法(平成18年法律第92号による改正前のもの)6条4項,建築基準法(平成18年法律第92号による改正前のもの)6条5項,国家賠償法1条1項


 一級建築士免許取消処分等取消請求事件
平成23年6月7日  最高裁判所第三小法廷 判決
 破棄自判、 民集 第65巻4号2081頁
【判示事項】
 公にされている処分基準の適用関係を示さずにされた建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づく一級建築士免許取消処分が,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法であるとされた事例
【裁判要旨】
 建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づいてされた一級建築士免許取消処分の通知書において,処分の理由として,名宛人が,複数の建築物の設計者として,建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行い,それにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させ,又は構造計算書に偽装が見られる不適切な設計を行ったという処分の原因となる事実と,同項2号及び3号という処分の根拠法条とが示されているのみで,同項所定の複数の懲戒処分の中から処分内容を選択するための基準として多様な事例に対応すべくかなり複雑な内容を定めて公にされていた当時の建設省住宅局長通知による処分基準の適用関係が全く示されていないなど判示の事情の下では,名宛人において,いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることができず,上記取消処分は,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法である。
【参照法条】
 行政手続法12条,行政手続法14条,建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項,建築士の処分等について(平成11年12月28日建設省住指発第784号都道府県知事宛て建設省住宅局長通知。平成19年6月20日廃止前のもの)記(附則を除く。),建築士の処分等について(平成11年12月28日建設省住指発第784号都道府県知事宛て建設省住宅局長通知。平成19年6月20日廃止前のもの)別表第1(表1を除く。)


 損害賠償請求事件
 平成15年11月14日  最高裁判所第二小法廷  判決
 棄却 、 民集 第57巻10号1561頁
【判示事項】
 1 建築士が建築士法3条から3条の3まで及び建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2の各規定等による規制の実効性を失わせる行為をした場合における建築物の購入者に対する不法行為の成否
2 建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をした一級建築士が建築主に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執らずに放置した行為が当該建築主から瑕疵のある建物を購入した者に対する不法行為となるとされた事例
【裁判要旨】
 1 建築士は,その業務を行うに当たり,建築物を購入しようとする者に対する関係において,建築士法3条から3条の3まで及び建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2の各規定等による規制の潜脱を容易にする行為等,その規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があり,故意又は過失によりこれに違反する行為をした場合には,その行為により損害を被った建築物の購入者に対し,不法行為に基づく賠償責任を負う。
2 一級建築士又は二級建築士による設計及び工事監理が必要とされる建物の建築につき一級建築士が建築確認申請手続を代行した場合において,建築主との間で工事監理契約が締結されておらず,将来締結されるか否かも未定であるにもかかわらず,当該一級建築士が,建築主の求めに応じて建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をし,工事監理を行わないことが明確になった段階でも,建築主に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執らずに放置したこと,そのため,実質上,工事監理者がいない状態で建築された当該建物が重大な瑕疵のある建築物となったことなど判示の事情の下においては,当該一級建築士の上記行為は,建築士法3条の2及び建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2の各規定等による規制の実効性を失わせる行為をしたものとして当該建物を購入した者に対する不法行為となる。
【参照法条】
 民法709条,建築士法3条,建築士法3条の2,建築士法3条の3,建築士法(平成9年法律第95号による改正前のもの)18条,建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2