第4章 裁判官はなぜ怒ったのか(18) - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

羽柴 駿
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(弁護士)
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閲覧数順 2016年12月02日更新

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第4章 裁判官はなぜ怒ったのか(18)

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(第18回)

 続いて弁護人の弁論の日がやってきました。私は弁論において改めて、被告人には過失はなく無罪であると主張しました。
 私はまず、本件において起訴されているのは「前方」注意義務違反であること、従って「後方」や「側方」に対する注意義務違反は訴因に含まれていないことを念のため指摘し、結局のところ被告人の過失の有無は運転席の被告人から前方の見通し可能な範囲内に被害者がいたかどうかによって判断されるものであると主張しました。
 ついで、被害者がダンプカーの前に飛び出した時、運転席からは被害者の腕から肩、顔の一部がわずかに見えるだけで極めて見にくいし、被害者の姿勢次第では見えなくなる可能性もあると主張しました。更に、飛び出した被害者を前進しつつあるダンプカーの運転席から見た場合、わずか0.36秒後には完全な死角に入ってしまうことになり、以後は衝突まで肉眼では見えないこと、従って、このようなほんの一瞬しか見えない被害者に気づかなかったからといって過失があるとは言えないと主張しました。
 この主張はBさんの証言を元に計算し、裏付けたものでしたが、Bさんは30メートル以上離れた場所から、しかも坂の下から上を見上げる形で目撃したものなので、誤差は十分あり得ること、従って実際の被害者は、Bさんの証言した地点よりもっとダンプカーに近い地点から飛び出した可能性もあること、その場合、被害者が最初から死角に入ってしまう可能性があることも指摘しました。
全ての審理が終わり、判決が2週間後に指定されました。後は判決を待つだけです。

                         (次回へ続く)