- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
寺本振透『解説 新信託法』弘文堂
罰則の部分を除く本文約310頁。平成19年刊行。
信託法の立法に際して出版された。
今日までに、上記書籍のうち、以下の部分を読みました。
新しい信託法は、旧・信託法よりも使いやすように工夫がされているようだが、旧・信託法の下で起きた不具合にも対処している。
そもそも信託業法の資本金要件など規制が厳しいし、信託会社や投資信託及び投資法人に関する法律の投資法人なども、委託者が事業者・富裕層・投資家、受託者が信託銀行などのプロ、信託財産も一定額以上を予定しているので、特定の需要にのみ対応していると感じた。
旧・信託法と異なり、株券発行会社の株券について対抗要件を規定を設けず、動産として、取り扱うという解説には違和感を覚えた。会社法では株主名簿の書換えが会社に対する対抗要件である。会社にすら対抗できないのに、第三者に対抗できるというのは、結論として、つじつまが合わない。この点、信託法としては、善意取得の問題も含めて、会社法の解釈問題に任せるというのが立法趣旨ではなかろうか。
上場株式会社は、社債、株式等の振替に関する法律により、株券電子化により、振替会社への個別株主名簿の書換えが対抗要件となっているから、上場株式会社については、社債、株式等の振替に関する法律の手続を踏むことにより、信託財産とすることに問題がない。
もっとも、事業信託・自己信託のような例外を除き、上場株式以外は信託会社は取り扱わないというのが、実務での取扱いではなかろうか。
また、受託者は固有財産と信託財産の分別管理をしなければならないが、倒産隔離のリスクは残る。現に、J-REITの上場会社が倒産した実例がある。このため、破産法・民事再生法・会社更生法には、信託財産に関する規定が新設されている。
本書の中で誤りがあると思われる。損失補てん等の債権の消滅時効(信託法43条)について、同条1項で信託法40条(受託者の損失補てん責任)、2項で41条(法人である受託者の役員の連帯責任)と書き分けていることからすると、43条2項により、41条の債権については、商事時効(5年)ではなく、43条2項の10年が消滅時効と解される。
信託法
(平成十八年十二月十五日法律第18号)
最終改正:平成二五年五月三一日法律第28号
第1章 総則(第1条―第13条)
第2章 信託財産等(第14条―第25条)
第3章 受託者等
第1節 受託者の権限(第26条―第28条)
第2節 受託者の義務等(第29条―第39条)
第3節 受託者の責任等(第40条―第47条)
第4節 受託者の費用等及び信託報酬等(第48条―第55条)