土壌汚染対策法 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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土壌汚染対策法

土壌汚染の予防として、水質汚濁防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律によって対処されている。

土壌汚染対策法は、土地の土壌に蓄積された汚染物質の隔離、除去などを定めている。

土壌調査の契機として、3条~5条の3つのルートがある。

汚染の程度に応じて、指定区域は、要措置区域、形質変更時届出区域の2つに分けられる。

汚染土地の所有者・管理者・占有者の措置費用の負担義務がある。この費用については、最終的には汚染責任者(例えば、工場跡地で、工場の土地の元の所有者)に求償できる。

汚染土壌の搬出は規制される。これには、汚染土壌を他の土地へ持ち出すことにより、他の土地が汚染されることを予防する、産業廃棄物処理法の補完的意味合いもある。

汚染除去の措置命令の義務付け訴訟と原告適格について、下記の平成24年最高裁判決がある。

有毒物質使用特定施設である旨の土地所有者等に対する3条2項の通知の処分性

最高裁平成24・2・3(肯定)

土壌汚染対策法3条2項による通知は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

 1 本件は,土壌汚染対策法(以下「法」という。)3条1項所定の有害物質使用特定施設に係る事業場の敷地であった土地の所有者である被上告人が,当該施設の使用の廃止に伴い,法に規定する都道府県知事の権限に属する事務を行う旭川市長から同条2項による通知を受け,上記土地の土壌汚染状況調査を実施してその結果を報告すべきものとされたことから,上記通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たることを前提にその取消しを求めている事案である。論旨は,同条2項による通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとした原審の判断に法令の解釈の誤りがあるというのである。
 2 都道府県知事は,有害物質使用特定施設の使用が廃止されたことを知った場合において,当該施設を設置していた者以外に当該施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者・管理者・占有者(以下「所有者等」という。)があるときは,当該施設の使用が廃止された際の当該土地の所有者等(土壌汚染対策法施行規則(平成22年改正前のもの)13条括弧書き所定の場合はその譲受人等。以下同じ。)に対し,当該施設の使用が廃止された旨その他の事項を通知する(法3条2項,同施行規則13条,14条)。

その通知を受けた当該土地の所有者等は,法3条1項ただし書所定の都道府県知事の確認を受けたときを除き,当該通知を受けた日から起算して原則として120日以内に,当該土地の土壌の法2条1項所定の特定有害物質による汚染の状況について,環境大臣が指定する者に所定の方法により調査させて,都道府県知事に所定の様式による報告書を提出してその結果を報告しなければならない(法3条1項,同施行規則1条2項2号,3項,2条)。

これらの法令の規定によれば,法3条2項による通知は,通知を受けた当該土地の所有者等に上記の調査及び報告の義務を生じさせ,その法的地位に直接的な影響を及ぼすものというべきである。
 都道府県知事は,法3条2項による通知を受けた当該土地の所有者等が上記の報告をしないときは,その者に対しその報告を行うべきことを命ずることができ(同条3項),その命令に違反した者については罰則が定められているが(平成21年改正前の法38条),その報告の義務自体は上記通知によって既に発生しているものであって,その通知を受けた当該土地の所有者等は,これに従わずに上記の報告をしない場合でも,速やかに法3条3項による命令が発せられるわけではないので,早期にその命令を対象とする取消訴訟を提起することができるものではない。

そうすると,実効的な権利救済を図るという観点から見ても,同条2項による通知がされた段階で,これを対象とする取消訴訟の提起が制限されるべき理由はない。
 以上によれば,法3条2項による通知は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である(最高裁昭和39年10月29日判決・民集18巻8号1809頁等参照)。

(参照条文)

土壌汚染対策法31項・2項・3項,

土壌汚染対策法施行規則(平成22年改正前)122号,土壌汚染対策法施行規則(平成22年改正前)13条,

行政事件訴訟法31項,行政事件訴訟法32

最高裁平成22・6・1

売買契約の目的物である土地の土壌に,土地売買契約締結後に法令に基づく規制の対象となったふっ素が基準値を超えて含まれていたことは,

(1)上記売買契約締結当時の取引観念上,ふっ素が土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず,(注)

(2)上記売買契約の当事者間において,上記土地が備えるべき属性として,その土壌に,ふっ素が含まれていないことや,上記売買契約締結当時に有害性が認識されていたか否かにかかわらず,人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことが,特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれない

など判示の事情の下においては,民法570条にいう瑕疵に当たらない。

(注)本件の当該売買契約当時、ふっ素は有毒物質としての規制の対象とはされていなかった。