- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
著作権判例百選37事件、「グッドバイ・キャロル」事件
映画の著作物として、映画監督が著作者で、映画監督が代表取締役である映画製作会社が著作権者であったが、著作権は後に他へ譲渡されたと認定されている。著作権の譲渡を受けた会社が、映画監督が撮影編集をしたオリジナル映像を、許諾を得ずに編集した映像を用いて、映画監督が撮影などをした旨の表示をせずにDVDとプロモーション映像を作った。映画監督の著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)を侵害したと認められた事例。映画の著作物の特性として、著作者と著作権者が別人であることを認識したうえで、DVD化するなどに際して、映画監督の許諾を受けて、編集しなおすことと、映画監督の氏名を表示すれば紛争を予防できたといえる。もっとも、映画監督の許諾を受ける際に、許諾料を支払う必要がある。
譲渡契約の解釈
著作権判例百選69事件 HEAT WAVE事件
音楽の著作物の著作権全部譲渡型である。
音楽業界では、音楽家(実演家)が著作権・著作隣接権をレコード会社などに譲渡して、譲渡の対価(実演家印税)は、その後の売上に応じて支払われる慣行が確立されている。
音楽家が「原盤に係る一切の権利(著作隣接権を含む)を全部譲渡する」旨の契約が締結された約10年後に、著作権法で契約当時規定されていなかった実演家の送信可能化権の規定(著作権法92条の2)が創設された。
裁判所は、送信可能化権の規定が施行されたと同時に、送信可能化権は譲受人に譲渡されたと判示している。
THE BOOM事件も著作隣接権の全部譲渡型であって、同旨である。
音楽家は、俳優・声優の業界慣行と比較して、劣悪な立場にあるのではないかという疑問がある。
著作権判例百選70事件
「怪傑ライマン丸事件」
対象作品の放送権が譲渡された著作権一部譲渡型。
未知の利用方法に関して、著作権の全部譲渡型、一部譲渡型、著作権の全部利用許諾型、一部利用許諾型が考えられる。著作隣接権についても、同様に分類できる。
放送権を譲渡する旨の譲渡契約当時、放送権と別に、有線放送権が著作権法に規定されている。本件譲渡契約当時、衛星放送が行われていなかったとしても、将来発生する放送権を含め放送に関する権利すべてを含み得るように規定することは可能であった。譲渡人は資金繰りに窮しており、契約書を起草した譲受人は放送事業者であり業界内でも強い立場にあったから、譲受人に不利に解釈されても、やむを得ないと判示している。したがって、譲渡人に、衛星放送建・有線放送権は譲渡の対象とされていなかった。
契約書の作成の際のミスが原因と評価できる。
著作権譲渡契約における特掲要件
著作権判例百選71事件
「システムK2事件」
プログラムの著作物の特殊性
プログラムの著作物の作成の受託者がプログラムの著作物を作成したとき、プログラムの著作物の著作権は委託者に帰属する旨の契約条項が、著作権を当然に全部譲渡する趣旨の契約であると解されている。対象となるプログラムの著作物を他のプログラムの著作物に組み込んで継続的に商品化して販売する場合には、譲渡人が将来プログラムの著作物の改変・改良を譲受人が責任をもって行うことが前提となっていた、著作権法61条2項では、翻案権(27条)・二次的著作物利用権(28条)が特掲されていない場合、譲渡人に留保された旨と推定されるが、上記の場合では、翻案権・二次的著作物利用権も譲渡されたと認められ、推定が覆される。
継続的契約では、プログラムの著作物の譲渡契約を解除しても、解除の効力は将来に向かってのみ効力を生じると判示している。
もっとも、契約書起案の際に、翻案権・二次的著作物利用権も譲渡する旨定めるべきであったと思われる。
利用許諾契約の解釈
著作権判例百選73事件
「スウィートホーム」事件 映画の著作物について、ビデオ化・放送された二次的利用について、監督兼脚本家が追加報酬などを請求した事案である。
監督料と脚本料が支払われた以外に、劇場総収入が総製作費用を上回った場合に、上回った額の2%を「プロフィット」として支払う旨の契約がされた。ただし、本件では、プロフィットは条件をみたさないとして、支払われていない。
判決では、利用許諾の対価の支払いの金額・方式からみて、劇場用以外に、ビデオ化・放送を含めて全部について、利用許諾されたと認定されている。
出演契約の解釈
著作権判例百選74事件 アニメ声優事件
テレビ放送用アニメをビデオ化した場合、声優の追加報酬の請求を認容。
俳優・声優の業界慣行・取り決めとして、当初目的の番組以外に使用された場合、目的外使用料を支払う旨の業界慣行がある。