相続が開始した際に、相続人が採ることのできる選択肢として、単純承認、限定承認、相続放棄があるのは、前回のコラムで解説したとおりです(相続の3つの種類)。
被相続人の財産をすべて相続する「単純承認」が最も多いのは明らかですが、どれだけの人が、相続放棄や、限定承認を選択しているのかを、裁判所による司法統計で知ることができます。
相続放棄、限定承認の新受件数(裁判所ホームページ司法統計より)
年度 | 相続放棄 | 限定承認 |
平成19年 | 150,049件 | 1,013件 |
平成20年 | 148,526件 | 897件 |
平成21年 | 156,419件 | 978件 |
平成22年 | 160,293件 | 880件 |
平成23年 | 166,463件 | 889件 |
平成23年、全国の家庭裁判所での新受件数は、相続放棄が16万6,463件、限定承認が889件でした。これに対し、平成23年の死亡者数は125万3463人です(厚生労働統計より)。
ここで相続放棄の件数を、死亡者数で単純に割れば、10%以上の割合で相続放棄をしていることになりますが、そうではありません。1人の被相続人に対し、複数の方が相続放棄をすることがあるからです。
相続人が相続放棄をした場合、次の順位の相続人がいれば、その方が相続人となります。そこで、被相続人の配偶者および子が相続放棄した後に、直系尊属、兄弟姉妹と、複数の方が手続きをするのが通常です。
それでも、1年に16万人以上の方が相続放棄をされているわけですから、非常に多数であることに変わりはありません。
相続放棄の件数と比べると、限定承認は極端に少ないです。これは、限定承認の手続きが複雑であることや、手続きを行う際の相続財産管理人の責任が重いことなどにより、相続放棄を選択してしまうからだと考えられます。
・相続放棄を選択する理由
相続放棄はいかなる理由であろうとも、相続人の真意によるのであれば、することができます。家の跡継ぎとなる人に遺産相続させるため、ほかの相続人全員が相続放棄をすることも、かつてはよく行われたようです。
しかし、現在では、相続を放棄した方の多くが被相続人の債務超過を原因とするものだと思われます。
また、私が司法書士としてご相談を受けている印象では、家族関係の希薄化や、離婚の増加などを反映してか、相続に関わりたくないとの理由で放棄を選択する方も増加しているように感じます
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