米国特許判例紹介:審査段階におけるcomprisingの解釈5 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:審査段階におけるcomprisingの解釈5

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   米国特許判例紹介:審査段階におけるcomprisingの解釈
      〜新規性判断とcomprisingの関係〜(第5回) 
   河野特許事務所 2009年12月25日 執筆者:弁理士  河野 英仁

            In Re Robert Skvorecz

 4.CAFCの判断
ComprisingのプロトコルとBRIプロトコルとは相違する。
 CAFCは、comprisingの記載を根拠に、クレームがオフセットの設けられていないワイヤ脚を更に備え、その結果Buff特許から予期できるとした審判部の判断を無効とした。

 CAFCは、審判部が最も広い合理的な解釈(BRI)を誤って適用したと判示した。BRIは、審査過程においてクレームを明確化するために審査の便宜上利用されるものであり、comprisingの如くクレームの権利範囲解釈に用いられるものではない。

 クレームは各ワイヤ脚を横方向に動かすために、全てのワイヤ脚にオフセットを設ける点を特徴とする。これに対し、Buff特許は縦断ワイヤ49にはオフセット52が設けられているものの、横断ワイヤ48にはオフセットが存在しない。CAFCは、新規性の判断において、移行部にcomprisingが記載されていようが、BRIを用いようが、審査対象となるクレームに他の要素を追加してはならないと述べた。

 「anticipation(予期性(新規性))」の拒絶は、発明が新しくないことを意味し、当該新規性の判断は、クレームの全ての構成要件が単一の先行技術に開示されていることが必要とされる*9。そうするとBuff特許には、クレーム1の如く、「各ワイヤ脚を横方向に動かすために、全てのワイヤ脚に設けられたオフセット」が開示されていないこととなる。以上のことから、CAFCはBuff特許からクレームに係る発明を予期できるとした審判部の決定を無効とした。

 また審判部は図12及び図13は一部の構造しか開示しておらず、全ての第1リム上にオフセットが記載されているかどうかは不明確であるとして、記載不備を指摘した。CAFCは、「出願人の開示義務は、発明が関連する技術分野によって変わるものである。」と過去の判例*10を挙げ、記載不備に関し柔軟な判断を行い審判部の厳格な判断を無効とした。

 つまり、他の図面(図1、7、10及び11等)には他の形態として、完全な全体図が記載されている。CAFCは、このような状況からすれば、当業者が、図12及び図13の一部構造に係る記載を見れば、全体図面が存在しなくとも、全ての第1リム上にオフセットが設けられていると理解できると判断した。以上のことから、記載不備を理由に拒絶と判断した審判部の決定を無効とした。


5.結論
 CAFCは、新規性及び記載不備を理由に拒絶と判断した審判部の決定を無効とし、再度審査を行うよう命じた。
                                     (第6回へ続く)

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