藤井 雅子(心理カウンセラー)- コラム「自己責任という言葉に対する違和感」 - 専門家プロファイル

藤井 雅子
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フジイ マサコ
( 東京都 / 心理カウンセラー )
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自己責任という言葉に対する違和感

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2021-12-16 14:50

先日テレビを見ていたら、30代の男性が、僕らの世代以降はどんな過酷な環境でも基本的に自分の責任だと思っている、それは大人からの影響だというようなことを言っていて衝撃を受けました。

 

私はもともと「自己責任」という言葉にものすごく違和感があります。

 

もちろん、自分の言動に責任をもつことはとても大事、というか、(精神的に)大人になるということは、自分の言動や選択に責任がもてるようになることだと思います。そんなあたりまえのことをわざわざ「自己責任」と言う必要がどこにあるのか、つまり自分で自分の責任をとれない人が増えたということなのだろうと憂いていたのですが、もっと衝撃的な事実を知ったのです。

 

それは、若者たちが、たとえばヤングケアラーとして自分を犠牲にして家族のケアをしなければならないことも自己責任だと思って受け入れているということです。

 

暴力をふるうような親のもとに生まれたことも自己責任? そんなバカな。自分で選べなかった環境に責任はありません。だってそれは一種の事故、不可抗力で、むしろ被害者でしょう。

 

ただし、大人になって生活力を得てからの選択は自分の責任。ずっと過去の不遇にこだわって被害者として生き続けるか、過去を自分なりに整理消化しよりよい人生を築くか、自分をケアするしないは本人の責任だと思います。

 

たとえば、生きづらさをかかえてしまったことはその人の責任ではないけれど、それをそのまま放置するのはその人の選択であり責任です。例外は、生きづらくても自分の問題としてとりくんでいく能力や経済力などがない場合で、こうしたケースをどう援助するかは大きな課題だと思います。

 

残念ながら、日本人には自信のない人、いわゆる自己肯定感が低い人が多いのは、各国比較のデータでも明らかです。

 

自信のない人は、責任をとても怖れます。だからこそ、責任に対し過剰反応するのだと思います。

 

また、自信のない人は極端になりやすいので、責任を徹底的に避けるか過剰にとろうするかのどちらかになりがちです。

 

これはコインの裏表で、自信がなくて責任逃れをしようとするタイプもいれば、自信がないのを隠すように強がってふるまうタイプもいて、こちらは自覚がないことが多くとてもやっかいです。

 

まじめで責任感が強い人のなかには、実は自信がなくて過剰に責任を感じて自分を追いこんでいる人がいます。責任をとりすぎる人は、客観的に見れば自ら進んで自分を犠牲にしているのだから抱えこんだ責任を手放せばラクになるのですが、本人はつらい現状に執着して、できない自分を責め、「損をしてる」「割に合わない」「報われない」と苦しさを訴え続けます。

 

私は、仕事でもプライベートでも、苦しい思いが続くならその環境は自分に合わないものなので、もっと自分に合うような環境を整えればいいと思っています。がんばっても報われないときは、適性や相性が合わないと認め、自分を傷つける状態から早く脱出することが解決策です。

 

「逃げたら負け」「いつか報われる」と思いこんでいる人もいますが、つらい環境から自分を守るためにはむしろ「逃げるが勝ち」です。つらい状況は、長引くほどどんどん深みにはまって抜けにくくなるので、できるだけ早く逃げましょう。

 

くりかえしますが、自分の人生をより快適なものにするかどうかは自分で選べます。私たちには自分を幸せにする権利と責任があります。自分を守るために不穏な環境から離れたり、誰かの助けを求めたり、ゆっくり休んだりすることは、立派なセルフケアで恥ではありません。

 

「期待には応えなければ」「必要と思われたい」と思う気持ちもわかりますが、無条件に応えなくていいんです。断ってもいい。そうしないといいカモにされ、都合よく利用されてしまいます。期待に応えるのは「できる範囲で」で充分。何をするしないかは自分の責任で選びましょう。

 

どうか自己責任ということばに惑わされないように。つらいときは逃げて自分を守ってください。仕事でつらい場合はパワハラの可能性も高く、がまんしても悪化するだけです。プライベートではモラハラやDVの疑いもあります。どちらもひとりで対処するのは大変なので、できれば専門家に相談をしてください。 また、自分に余裕がないとイライラしやすくなって、つい他人に対し責任を過剰に求めて弱い人や苦しい人に厳しくなりがちになってしまいます。(ハラスメントの連鎖) それぞれが適切に責任がとれるようになると、自分に余裕ができて他人をあたたかい目で見られるようになり、ストレスが激減して日々穏やかに過ごせるようになります。そんな好循環で世の中がハッピーになると願ってやみません
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