こんにちは、今井淑恵です。
６月を迎え、学生さんたちは夏服に着変える頃となりました。

◆◆ことのは探訪　『今日のお題　～  衣替え ～ 』◆◆

暮らしの習慣は時代とともに変わってゆきます。
それに伴って、古くから続いてきた決まり事はあいまいになり、
言葉のイメージも別なものになるようです。

「衣更え（ころもがえ）」という言葉があります。
「衣替え」「更衣」などの字を使うこともありますが、
宮廷行事に起源をもつ「衣更え」は、
古くは四月一日と十月一日に固定されていました。

それでは現代はどうでしょう。

六月になると中学生や高校生の制服が夏服に替わります。
あるいは銀行やデパートでも、接客係の服装が涼しげな装いになります。

それらを「衣更え」という言葉で説明してもいいのですが、
何月何日、全国でいっせいに行われるわけではありません。
気が付くと、いつの間にか、街中が夏っぽくなっていたというところでしょう。

暦日意識が薄れたから、
洋服洋装が一般化したからだろう、
などなど、理由はいくらでも挙げられます。

しかし、どこに重きをおくかはともかくとして、
「衣更え」という言葉が生活の実感から遠のいているのは、
紛れもない事実です。

京都の旧家など伝統的な習慣が残されているところでは、
衣類だけでなく、障子なども夏用に改める「建具替え」が行われるそうです。
しかし、それを特殊なケースと思ってしまうのが、
現代人の生活感覚ではないでしょうか。

こんなことをいうと、極論だと叱られそうですが、
もしかすると「衣更え」は、
俳句の作法書でしかお目にかかれない言葉になっているのかもしれません。

というわけで、歳時記（夏）から一句拝借、

　　すゞかけも空もすがしき更衣　　石田波郷

☆★☆次回は

「大人のきれい字　実技編　 ～芒種 （ぼうしゅ）～」

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