受診が遅れてしまう理由(2)
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次に、患者さんはそれを病気と思っても「心」の病気とは思いたくないという心理「否認」があります。特に日本人には昔から「精神主義」「根性主義」とでも言うべき文化があり、失敗や挫折をして落ち込むことを「弱い」とか「恥ずかしい」「情けない」とか考えてしまいがちです。このため具合が悪くても病院や医師に相談しようとは直ぐに思えないのでょう。確かに精神的な成長のためには失敗や挫折は「心の糧」になりますが、過ぎると「心の傷」になってしまいます。「傷」は自然に治ることもありますが、時に膿んだり広がったりもすることもありますので注意が必要です。少なくとも、うつ病のように、憂鬱な気分が2週間以上続いたり、身体の症状が現れている時は我慢しないで早く受診して治療を受けていただくことが必要です。成長するどころか、心理的にも社会的にも障害を残すことがありますから、速やかに受診していただくことをお勧めいたします。
しかし「心」の診療科へ受診することはどなたも躊躇われるようです。特に「精神科」=「精神病」=「重症」という「偏見」や「差別」の意識があり、受診するにはそれなりの決意や覚悟が必要となってしまうようです。受診した後も家族や友人へは内緒にしていることが少なくなく、中には会社に分からないようにと、健康保険を用いず、高額な自費で支払われる方もいます。これではなかなか気軽に受診するとはいきませんね。そこで以前は「神経科」という名称が用いられ、最近は「心療内科」という標榜が増えています。「メンタルクリニック」や「ストレスクリニック」というところもあります。医療機関も受診しやすいように配慮しているのです。(続く)
銀座泰明クリニック