茅野 分(精神科医(精神保健指定医、精神科専門医))- コラム「臨死体験/NHKスペシャルより」 - 専門家プロファイル

茅野 分
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茅野 分

チノ ブン
( 東京都 / 精神科医(精神保健指定医、精神科専門医) )
銀座泰明クリニック 院長
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臨死体験/NHKスペシャルより

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2014-09-26 23:12

『私』という存在は死んだらどうなるのか、死ぬとき『私』は何を見るのだろうか――。 20年余り前、臨死体験について徹底的に取材し考察を深めてきたジャーナリスト/評論家立花隆さん。74歳を迎え、がんや心臓の病を抱えて死を間近に感じる今、再び臨死体験の最新研究の現場を見つめ、“死”について思索しようとしている。死の間際に一定の人が見る臨死体験。臨死体験が世界で注目され始めた1980年代以来、その解釈としては、脳内現象として科学で説明できるとする「脳内現象説」と、肉体が死んでも“魂(もしくは自我を感じる「意識」)”が存在し続けるという「魂存在説」―――これら二つの説が互いに相容れない、激しい議論が続いてきた。そうした中、立花さんは新たな臨死体験の掘り起こしをすると同時に、そもそも「意識(魂)」と呼ばれているものの正体とは何なのか、最新の脳科学・心理学・哲学にいたるまで、徹底した取材に基づいて正面から挑もうとしている。科学的に見て、死後の世界があると言える余地はどれくらいあるのか。死後の世界がないとしたら、『私(自分)』という意識(魂)はどう生まれどう消えていくのか。私たちが当たり前と思っている『私』という存在はいったい何なのか。有史以来、人類が答えを追い求め続けてきた生と死にまつわる壮大な謎―――その謎に挑む立花さんの思索の旅を通じて、大震災や紛争などで多くの命が失われる今、命や『私』の存在する意味を考える。


「臨死体験」として「神秘体験」を生じる方がいらっしゃるそうです。花畑を歩き回り、亡くなったはずの親や親戚に出会う、「幽体離脱」して、死に瀕している自分を部屋の上から眺めるのだそうです。このような体験が科学的に解明されるような時代になりました。大脳辺縁系をはじめとした脳細胞60兆個からなる神経ネットワークの織り成すまさに夢のような現象です。番組では人間の臨床検査はもとより動物実験も含めて検証を重ねる様子が放映されました。

「神秘体験」とは「生老病死」の「死」という生物として避けることのできない現象を前に、高度に知性化した人間が恐怖することなく、死を受け容れられるよう、脳を発達させた形だと思います。古今東西、不老不死は人間の究極の夢でした。しかし、それは叶うことなく、誰もがいつかは死を受け容れなければなりません。そのために死の間際に「神秘体験」のような「夢幻現象」が求められるのではないでしょうか。ターミナルケアの現場においては、末期がんのため「適応障害、うつ状態」になる方が少なくなく、さらに術後や臨死の際に「せん妄」という幻覚・妄想を伴う意識障害に陥ることもあります。これらは「臨死体験」の背景にある精神病理と言えるでしょう。

ターミナルケアにおいては「医療」よりも「宗教」の方が有効かもしれません。医療は疼痛緩和や不眠・不安の対症療法にすぎません。最も重要なことは来たるべき死を素直に受け入れる「心の平安」で、これは信じること、祈ることにより得られます。キリスト教や仏教をはじめとしたあらゆる宗教が死後の救済を筆頭の題目に挙げ、「人智を超えた大いなる存在」に身を委ねることを説いています。

「精神医療」においても難治性疾患では薬物療法や認知療法など科学的な治療法が及ばない時には「祈り」が求められます。アルコール依存症の自助グループ"AA. Alchoholic Anonymous" では 自分の無力さを認め、Higher Power に自らを委ねることからはじまります。日本発祥の「内観療法」では屏風の中で合掌・お辞儀して、内観者の中に宿る仏性」を信じることからはじまります。いずれも人間の無力さを自覚し、神や仏といった大いなる存在に自らを委ねることで、ようやく「解脱」「悟り」の境地に至るのでしょう。

銀座泰明クリニック


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