茅野 分(精神科医(精神保健指定医、精神科専門医))- コラム「インターネットによる精神障害の早期発見・早期治療(7)」 - 専門家プロファイル

茅野 分
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茅野 分

チノ ブン
( 東京都 / 精神科医(精神保健指定医、精神科専門医) )
銀座泰明クリニック 院長
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インターネットによる精神障害の早期発見・早期治療(7)

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2008-05-27 09:41

疾患は統合失調症圏(F2)22人、気分障害圏(F3)142人、神経症性障害圏(F4)196人だった。未治療154人が受診の適否について、治療中105人がセカンドオピニオンとして現在の治療について質問してきた。内訳は、統合失調症圏が未治療5人、治療中17人、気分障害圏は未治療43人、治療中100人、神経症性障害圏は未治療139人、治療中56人であった。

すなわち30歳前後の女性が相談者の中心を占めていた。首都圏・大都市をはじめ、地方や海外からの相談も複数、認められた。疾患の中心は気分障害圏・神経障害圏であった。質問内容は未治療の受診の適否や、治療中のセカンドオピニオンが大半だった。主治医との治療関係や現在の治療内容など、主治医に相談できない悩みも少なくなかった。

逆に男性からの相談がとても少なかった。All About利用者の男女比は概ね等しいため、質問することをためらっているのかもしれない。これは「援助探索行動 help seeking behavior」を取っていないとも言える。毎年3万人を超える自殺者の多くを高齢男性が占めている事実を考慮すると、今回の結果にもその一端が表れているのではないかと考えられる。更に、All About利用者の平均年齢は約40歳であるため、高齢者の利用も少ない。このようにインターネットを用いることのできる人とできない人との間に格差を生じる''「デジタル・ディバイド」''が生じることを認識して、世代を超えた''「インターネット・リテラシー」''(インターネットを使いこなす能力)が実現されることが望まれる。

また統合失調症圏の相談が少なかった。有病率自体も少ないからであろうが、注目すべきは未治療の質問の割合が神経症圏に比較して明らかに少ないことである。この割合は気分障害圏も同様である。実際に「このような症状は病気なのでしょうか?」「何科を受診すればよいのでしょうか?」という質問を多く認めた。これは精神疾患に関する情報が不足している事情と、各精神疾患の持つ性質に拠ると思われる。神経症圏の患者が「わかってほしい」と思う半面、気分障害圏の患者は「わかりっこない」と思い込み、統合失調症圏に至っては「わかられている」という被害妄想的な心理を抱いていることが想像される5)。これらの課題に対して我々は1998年より統合失調症の当事者・家族を対象として「みなとネット21」 および「東京ユースクラブ」を通じて、精神障害に関する情報提供しながら早期発見・早期治療を呼びかけてきた20)。

インターネットによる精神保健相談は他にも国内各地で試みられている12)17)。筑波大学大学院人間総合科学研究科精神病態医学では2003年から“3rd life” を開設し、アンケート・心理相談・心理検査を行っている21)。その結果、33590人の対象者の8割にうつと不安の訴えが認められ、治療必要な者のうち半数が未受診であったという。この理由として「精神科への抵抗感」や「精神科病院に関する情報不足」が挙げられた。(つづく)

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