大園 エリカ
オオソノ エリカロシアでの貴重な体験と思い出
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前回ではロシアのお話しが出ましたので、ここで私が若かりし頃にロシアに短期研修に行った時の思い出をお伝えしようと思います。♫
所属していたバレエ団を退団してすぐの20代の頃、私はボリショイバレエ団のソリストの方と日本で一緒に「眠れる森の美女」のグラン・パ・ド・ドゥ(第3幕で踊られるオーロラ姫とデジーレ王子の結婚式に披露される二人の踊り)を踊るご縁を頂き、そのリハーサルの為にロシアに参りました。
当時ロシアはソビエトと呼ばれていた時代でございます。(あ~、これで又私の年齢がバレますね~!?(笑))
ロシアに着いて、練習をさせて頂けるモスクワ・クラシックバレエ団で早速レッスンに入りましたが、何と私の相手役になる人はボリショイバレエ団のインド公演ツアーに参加していて不在というのです!
それをお聞きした時に「え~~~?それじゃぁ、何の為に私はここに・・・?」と思いましたが、でもレベルの高いロシアンバレエを学ぶ貴重な機会に変わりはないので、気を取り直してソロで踊るパートをロシアの先生に指導して頂く事になりました。
バレエ団の最年少プリンシパル(当時)であるボリショイバレエ学校出身のウラジミール・マラーホフ氏(バレエ界では知る人ぞ知る有名な世界的スターダンサー)が教室を覗いて、そして私に「エリカ、僕が一緒に踊ってあげるよ!」と言って下さったのです。《゚Д゚》!!
そうして彼は私に少し振り付けの確認をした後に・・・
初めてなのに何の問題も無く、 スルスルとリハーサルができてしまいました。♫
(リハーサルの後に撮って頂いた一枚。 わ、わたしの顔が若い・・・!(^^;) )
そしてリハーサルを終えた彼は、私にとても誠実な目を向けながら、とても丁寧に「エリカ。貴女はとても良いダンサーです!」と言って下さいました。
それはきっと、リハーサル中に芸術家同士が無言の中で感じられるコミニュケーションを、お互い感じ合えていたから頂けたお言葉だったのでしょう。とても嬉しかったのを覚えています。
この時の彼はヴァルナ国際バレエコンクールのジュニア部門で金賞を取ったばかりで、当時日本ではあまり知られていない存在でしたが、その3年後にモスクワ国際バレエコンクールのシニア部門で再度金賞を受賞した後、瞬く間に世界的なスターダンサーとなって行きました。
彼はとても親切で穏やか、時に大変お茶目な方で、毎朝一緒に受けるクラスレッスンの中でもいつも私を気にかけて下さり「エリカ、その腕の使い方は違うよ!」と見本を見せながらロシアンバレエの基礎的な事を教えて下さったりしました。
彼からしたら私は日本から来た名も無いダンサーの一人でしかない存在ですのに、いつもとても紳士で誠実な姿勢で接して下さいました。 とても温かく謙虚な人でした。
この時のロシアではバレエは勿論、バレエ以外からも "目から鱗" の数々の経験をさせて頂き、それはその後の私に大変貴重な財産になりました。
特に若い時に海外の文化に触れる事は、自分の視野が広がる大変貴重な経験になり、それが今の自分の一部になっている事を実感致します。