- 小岩 広宣
- 社会保険労務士法人ナデック
- 社会保険労務士
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
理由は、「労働者派遣」の定義にあります。
1 自社(派遣会社)の雇用する労働者を、
2 派遣先の指揮命令によって、
3 派遣先のために就業させることをいい、
4 派遣先に対して派遣社員を雇用することを約束するものは含まない
「在籍型出向」は、出向先との間に雇用契約があるため、4 に反します。
また、「移籍型出向」は、自社との雇用契約がなくなるため、1 から反することになります。
つまり、「派遣」と「出向」はまったく別物です。したがって、健全なルールによる「出向」には、労働者派遣法の規制による許可や届出等は不要です。
ここで問題になるのは、「出向」の定義です。「出向」と認められるためには、次のような要素が判断材料となります。
1 業として行なわれるものではないこと
2 業務提携や技術指導、関連会社間の人事交流等を目的とする出向契約に基づくものであること
3 「在籍出向」の場合は、出向元と出向先とが適切な労務管理上の責任を負担すること
4 名称は「出向」であっても、実質的に「労働者派遣」や「職業紹介」にあたるものでないこと
まず、事業性があるものは「出向」とは認められません。
例えば、システム会社がエンジニアを取引先に出向させ、出向の対価を出向先から受ける場合は、事業目的によるので、「出向」ではなく、「労働者派遣」です。
また、「移籍型出向」の場合でも、移籍先から労働者の移籍にともなう対価を受ける等の事業性がある場合は、「出向」とは認められず、「職業紹介」だということになります。
営利目的をもって行なわれる「出向」や、実質が「労働者派遣」「職業紹介」と見なされる「出向」ついては、違法な事業と見なされ、是正や処分の対象となることもあるため、注意が必要です。