中小企業金融円滑化法の概要(1) - 借金・債務整理全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:借金・債務整理

村田 英幸
村田 英幸
(弁護士)
森 久美子
森 久美子
(ファイナンシャルプランナー)
村田 英幸
(弁護士)

閲覧数順 2016年12月05日更新

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

中小企業金融円滑化法の概要(1)

- good

  1. マネー
  2. 借金・債務整理
  3. 借金・債務整理全般
債務整理

中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(以下,中小企業金融円滑化法)

(ⅰ)中小企業金融円滑化法の概要

中小企業金融円滑化法は,最近の経済金融情勢及び雇用環境の下における我が国の中小企業者及び住宅資金借入者の債務の負担の状況にかんがみ,金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配意しつつ,中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために必要な臨時の措置を定めることにより,中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期し,もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的として立法されました(中小企業金融円滑化法1条)。

中小企業金融円滑化法は平成21年12月4日から施行されていますが平成23年3月31日限り,その効力を失います。ただし,同日までに行われた第4条第1項に規定する申込み,同条第2項に規定する確認及び同条第3項に規定する求め並びに第5条第1項に規定する申込みに係る事案については,同日後もなおその効力を有するとされます(中小企業金融円滑化法附則2条1項)。

  同法は時限立法ですが,条件変更等の申出が平成23年3月末日までに行われていればよく,また逆に金融機関が返済猶予等をする期限が同日までというわけではありません。

  中小企業金融円滑化法の失効前にした行為に対する罰則の適用については,中小企業金融円滑化法は,前項の規定にかかわらず,同項に規定する日後も,なおその効力を有するとされます(同条2項)。

前2項に規定するもののほか,中小企業金融円滑化法の失効に伴い必要な経過措置は,政令で定められます(同条3項)。

中小企業金融円滑化法の概要は,以下の通りです。

金融機関の努力義務

①円滑な中小企業金融(中小企業金融円滑化法3条)

②貸付条件の変更等(中小企業金融円滑化法4条1項,5条2項)

③他機関との協力・連携(中小企業金融円滑化法4条2項3項4項)

上記努力義務を担保する規定

①対応措置等に関する説明書類の縦覧(中小企業金融円滑化法7条1項)

②行政庁への報告(中小企業金融円滑化法8条)

③罰則(中小企業金融円滑化法17条,18条)

中小企業金融円滑化法において「金融機関」とは,次に掲げる者をいいます(中小企業金融円滑化法2条1項)。金融機関のうち,中小企業金融円滑化法の施行地外に本店を有するものは除かれます(中小企業金融円滑化法2条1項かっこ書)。

 すなわち,中小企業債務円滑化法は日本国内に本店がある金融機関が対象とされており,外国の金融機関は対象外とされています。

① 銀行 ② 信用金庫 ③ 信用協同組合 ④ 労働金庫⑤ 信用金庫連合会 ⑥ 中小企業等協同組合連合会 ⑦ 労働金庫連合会 ⑧ 農業協同組合 ⑨ 農業協同組合連合会 ⑩ 漁業協同組合 ⑪ 漁業協同組合連合会 ⑫ 水産加工業協同組合 ⑬ 水産加工業協同組合連合会 ⑭ 農林中央金庫

中小企業金融円滑化法(第4条を除く。)において「中小企業者」とは,次に掲げる者をいいます(中小企業金融円滑化法2条2項)。

業種

資本金・出資の総額

従業員の数

※一般事業

3億円以下

300人以下

小売業

5000万円以下

50人以下

サービス業

5000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。)

3億円以下

900人以下

ソフトウエア業・情報処理サービス業

3億円以下

300人以下

旅館業

5000万円以下

200人以下

農事組合法人

制限なし

制限なし

中小漁業融資保証法施行令第1条第3号に掲げるもの

制限なし

制限なし

 ※一般事業とは,金融業その他の政令で定める業種(施行令2条1項で定める金融・保険業(保険媒介代理業及び保険サービス業を除く。))に属する事業以外の事業をいいます。ただし,保険媒介代理業及び保険サービス業は一般事業に含まれます。

 中小企業金融円滑化法において「住宅資金借入者」とは,住宅資金としての住宅の建設若しくは購入のための資金(当該住宅の用に供する宅地又はこれに係る借地権の取得のための資金を含む。)又は持家である住宅の改良のための資金をいいます。)の貸付けを受けている者をいいます(中小企業金融円滑化法2条3項)。

 住宅資金とは,持家としての住宅の建設・購入のための資金(当該住宅の用に供する宅地又はこれに係る借地権の取得のための資金を含む。)又は持家である住宅の改良のための資金をいいます。すなわち,住宅(住宅用の宅地または借地権が含む。)の建設・購入,改良が対象となっています。

 持家とは,自ら居住するため所有する住宅をいいます。したがって,別荘や投資用のマンションや賃貸用アパートなどのローンは対象外です。

 中小企業金融円滑化法における行政庁は,次の各号に掲げる区分に応じ,当該各号に定める者とされます(中小企業金融円滑化法第13条1項)。

第2条第1項第1号から第3号まで,第5号及び第6号に掲げる金融機関

内閣総理大臣

第2条第1項第4号及び第7号に掲げる金融機関

内閣総理大臣及び厚生労働大臣

 

第2条第1項第8号,第10号及び第12号に掲げる金融機関(都道府県の区域を超える区域を地区とするものに限る。),同項第9号,第11号及び第13号に掲げる金融機関(都道府県の区域を超える区域又は都道府県の区域を地区とするものに限る。)並びに同項第14号に掲げる金融機関

内閣総理大臣及び農林水産大臣

第2条第1項第8号から第13号までに掲げる金融機関(前号に掲げるものを除く。)

都道府県知事

 

 

(ⅱ)①円滑な中小企業金融

金融機関は,中小企業者に対する信用供与については,当該中小企業者の特性及びその事業の状況を勘案しつつ,「できる限り,柔軟にこれを行うよう努めるものとする」(中小企業金融円滑化法第3条)とされていますから,金融機関にとっては法的義務ではなく,努力義務です。

 

(ⅲ)②貸付条件の変更等

ア 中小企業者から事業資金の債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合等における金融機関の対応

 金融機関は,当該金融機関に対して事業資金の貸付け(以下,単に「貸付け」といいます。)に係る債務を有する中小企業者(第2条第2項に規定する中小企業者であって,※次の各号のいずれにも該当しないものをいいます。)であって,当該債務の弁済に支障を生じており,又は生ずるおそれがあるものから当該債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合には,当該中小企業者の事業についての改善又は再生の可能性その他の状況を勘案しつつ,できる限り,当該貸付けの条件の変更,旧債の借換え,当該中小企業者の株式の取得であって当該債務を消滅させるためにするものその他の当該債務の弁済に係る負担の軽減に資する措置をとるよう努めるものとするとされています(中小企業金融円滑化法第4条1項)。 

金融機関の取る対応

当該貸付けの条件の変更

旧債の借換え

当該中小企業者の株式の取得であって当該債務を消滅させるためにするもの(DES,代物弁済の受領など)

その他の当該債務の弁済に係る負担の軽減に資する措置

 

「できる限り,・・・努めるものとする」という条文からして,金融機関が返済猶予を必ず行わなければならないモラトリアム法ではなく,努力義務を定めたものと解されます。

 貸付条件変更等については,「当該中小企業者の事業についての改善又は再生の可能性その他の状況を勘案しつつ」と規定されています。

したがって,改善又は再生の可能性もない場合には,条件変更等に金融機関が応じなくてもよいと考えられます。そうすると,債務者側にとっては,事業の改善・再生の可能性を具体的に数字や方策を経営再建計画に盛り込んで金融機関に申し込むことがポイントと考えられます。

 「貸付条件の変更」としては,貸付元本の弁済猶予や弁済期限の延長,弁済額の軽減・免除,金利負担の減免などの弁済条件の変更,弁済期限の到来した貸付の借換えなどが考えられます(中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律に基づく金融監督に関する指針Ⅱ-1-1(2))。

 例えば,毎月元利返済の約定を元本の返済を猶予し毎月利息のみ支払う条件に変更するなどといったことが考えられます。

 また,返済充当の順序の変更,例えば,遅延損害金,利息,元本の順に返済を充当するのが通常ですが,債務者に有利になるように,まず元本から充当していくといったことが考えられます。

 「当該中小企業者の株式の取得であって当該債務を消滅させるためにするもの」は,債務の株式化(DEBT EQUITY SWAP)をさします。

 債務を返済できないので,株式に振り替えることによって,負債を減らし,破錠の危機に瀕した企業の救済のために使われます。

 債務者の貸借対照表上では,負債の部の借入金が減少し,資本の部の資本金が増加します。

 会社法では,弁済期の到来した借入金のデット・エクイティ・スワップは,検査役の検査を不要とし,かつ,現物出資の評価証明制度の対象外としています(会社法207条9項5号,284条9項5号)。ただし,弁済期の到来していない借入金については弁護士等の評価証明が必要です(会社法207条9項4号,284条9項4号)。

 DESについては別のコラムで詳述しています。

 

※次の各号のいずれにも該当しないもの

① 第2条第1項第3号(信用協同組合),第6号(中小企業等協同組合及び中小企業等協同協同組合連合会)及び第8号から第13号(農業協同組合,農業協同組合連合会,漁業協同組合,漁業協同組合連合会,水産加工業協同組合,水産加工業協同組合連合会)までに掲げる金融機関

② 金融機関の子会社(金融機関がその総株主等の議決権(総株主又は総出資者の議決権をいいます。第4号において同じ。)の過半数を保有する会社をいいます。),銀行の親会社(銀行の総株主の議決権の過半数を保有する会社をいいます。)その他の金融機関と※1政令(施行令第3条1項)で定める特殊の関係のある者

③ 大会社(最終事業年度に係る貸借対照表の資本金額が5億円以上,または,最終事業年度に係る貸借対照表の負債合計額が200億円以上のいずれかに該当する株式会社)

④ 大会社の子会社(会社がその総株主等の議決権の過半数を保有する他の会社をいいます。)その他の大会社と※2政令で定める特殊の関係のある者

 

 

※1 政令(施行令第3条1項)で定める特殊の関係のある者は,次に掲げる者です。

①  金融機関の(注2)子会社等

②  銀行を子会社等とする(注1)親会社等

③  銀行を子会社等とする親会社等の子会社等(当該銀行及び前2号に掲げる者を除く。)

④  金融機関(注3)関連会社等

 

(注1)施行令第3条1項に規定する「親会社等」とは,他の法人の財務及び事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいいます。以下,施行令第3条2項及び施行令4条第2項において「意思決定機関」といいます。)を支配している法人として主務省令で定めるものをいいます(施行令3条2項前段)。

(注2)施行令第3条1項に規定する「子会社等」とは,親会社等によりその意思決定機関を支配されている他の法人をいいます。この場合において,親会社等及び子会社等又は子会社等が他の法人の意思決定機関を支配している場合における当該他の法人は,その親会社等の子会社等とみなされます(施行令3条2項後段)。

(注3)施行令3条第1項に規定する「関連会社等」とは,法人(当該法人の子会社等(施行令第3条2項に規定する子会社等をいいます。以下施行令第3条3項において同じ。)を含む。)が,出資,取締役その他これに準ずる役職への当該法人の役員若しくは使用人である者又はこれらであった者の就任,融資,債務の保証,担保の提供,技術の提供,事業上の取引等を通じて,財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる他の法人(子会社等を除く。)として主務省令で定めるものをいいます(施行令3条3項)。

 

※2 政令(施行令第4条1項)で定める特殊の関係のある者は,次に掲げる者です。

大会社の(注1)子会社等及び(注2)関連会社等

 

(注1)施行令4条1項に規定する「子会社等」とは,大会社によりその意思決定機関を支配されている他の法人として主務省令で定めるものをいいます。この場合において,大会社及び子会社等又は子会社等が,他の法人の意思決定機関を支配している場合における当該他の法人は,その大会社の子会社等とみなされます(施行令4条2項)。

(注2)施行令4条1項に規定する「関連会社等」とは,法人(当該法人の子会社等(前項に規定する子会社等をいいます。以下施行令4条3項において同じ。)を含む。)が,出資,取締役その他これに準ずる役職への当該法人の役員若しくは使用人である者又はこれらであった者の就任,融資,債務の保証,担保の提供,技術の提供,事業上の取引等を通じて,財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる他の法人(子会社等を除く。)として主務省令で定めるものをいいます。(施行令4条3項)。

 

イ 住宅資金借入者から債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合における対応

 金融機関は,当該金融機関に対して住宅資金の貸付けに係る債務を有する住宅資金借入者であって,当該債務の弁済に支障を生じており,又は生ずるおそれがあるものから当該債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合には,当該住宅資金借入者の財産及び収入の状況を勘案しつつ,できる限り,当該貸付けの条件の変更,旧債の借換えその他の当該債務の弁済に係る負担の軽減に資する措置をとるよう努めるものとするとされています(中小企業金融円滑化法第5条1項)。

この条項も金融機関にとっては努力義務を定めたものです。「当該住宅資金借入者の財産及び収入の状況を勘案しつつ」と規定されていますが,住宅ローン以外の借入金の返済など,住宅資金借入者の家計の状況を当然,考慮すべきと解されます。

なお,住宅資金借入者は,個人の居住用の住宅ローンが対象となっているので,会社を対象とするDESは規定されていません(中小企業金融円滑化法5条1項)。

 金融機関は,中小企業金融円滑化法5条1項の場合において,同項に規定する申込みをした住宅資金借入者に対して住宅資金の貸付けに係る債権を有する他の金融機関,独立行政法人住宅金融支援機構その他これらに類する者として主務省令で定めるものがいるときは,その者との緊密な連携を図るよう努めるものとされています(中小企業金融円滑化法5条2項)。この規定も金融機関の努力義務です。

 

このコラムに類似したコラム

中小企業金融円滑化法での中小企業に対する救済 村田 英幸 - 弁護士(2012/02/25 06:30)

中小企業金融円滑化法によって救済される債務者 村田 英幸 - 弁護士(2012/02/25 06:23)

破産とは 村田 英幸 - 弁護士(2013/04/15 07:03)

中小企業金融円滑化法の概要(2) 村田 英幸 - 弁護士(2012/02/25 06:47)

中小企業金融円滑化法での住宅ローン債務者に対する救済 村田 英幸 - 弁護士(2012/02/25 06:34)