神様の営業？

 とある厳冬のある日のことです。

  私、事務所でまどろんでおりました。

 外は寒いので出たくない、がんがんに暖房を入れぬくぬくの事務所でうとうとと・・

いえいえ、バリバリと仕事をしておりました。

すると、コンコンと事務所の扉をノックする音がします。

誰だろう、今日は来客の予定はないのですが・・

 この寒い中・・

そしてドアを開けると・・

 びっくりした！

何じゃこの人は？

 そこに神主さんが立っていたのです。

神職の人が着るあの裃？違う狩衣でしたっけ？

あれを着た人がドアの前に立っていたのです。

何だ何だ、お祓いか？

変なもんでもついてるっていうのか？

それとも変な宗教か？

勧誘か？

どうしたらいいんだ？

見つめ合う彼と私なのでした。

 ると彼がいいました、「○○神社の物ですが、こちらは設計事務所さんですよね」・・

○○神社は私もよく知っているこのあたりではよく地鎮祭の祭事なんかを取り扱っている神社です。

うちでも工事の際に何度かお願いしたことがあります。

どういうこと？

彼は続けます、「こちらで地鎮祭や上棟式なんかのご用命はありませんでしょうか？」

 はぁ？

営業？

神社の？

神主さんが？

 
うわあ・・

 
残念ながら工事の祭事を設計事務所がどこにと指定することは当事務所ではありません。

 お客さん自身におつき合いのある神社や氏子になっている神社がある場合はそこに、それがない場合は工務店さんが取引のある神社にお願いするのが普通です。

っていうか、たぶんどこの設計事務所でもそうだと思うのですが・・

その旨を丁寧にお話しさせて頂くと、残念そうに神主さんは帰って行かれました。

 いやはや、本当に景気悪いんですね・・

 神様も営業ですか。

 この商売をしていると、いろんな人達が営業にやってきます。

もちろん建築の建材とか工法とかを売り込みに来る人達がほとんどなのですが・・

恐ろしく景気の悪い昨今は今までとはちょっと違った人達がやってくるようになりました。

一時期は地盤調査屋さんとか解体業者とか測量屋さんなんかがしょっちゅうやってきました。

こういった人達はあんまり飛び込みとか訪問の営業はしなかった人達だと思うのですが・・

地盤調査屋さんなんて名古屋にこんなにあったんだ・・なんて思うくらいやってきました。

そういえば、ここのところ多いのは審査機関の営業です。

わかりますか？

審査機関・・

つまり確認申請などの建物を建てるための許認可を出して審査や検査をしてもらい許可をもらう所です。

昔はお役所以外には出せなかったのですが、民間開放されてからは半公共機関みたいな審査機関が名古屋にもたくさん出来ています。

ようするに天下り団体なわけなのですが・・

そこが無料駐車券とかクオカードとか持ってやってくるのです。

１社だけではなく２社も３社も・・

「確認申請は是非当機関でお願いいたします・・」

すげぇ・・

立場逆転だ。

「当機関では親切丁寧をモットーに・・なんたら」

うそつけ、あんたらほとんど役人上がりじゃん・・

「４号申請なら即日で、それ以外でも２週間以内に・・」

だからうそつけって、なんじゃかんじゃ言ってそんなに早くおりたことないじゃん・・

「近辺有料駐車場の無料駐車券をおいてきますので・・」

あ、それはもらっときます・・ありがとう。

本来は許認可をもらうために、こちらが平身低頭、どんな理不尽にも耐え、どんな馬鹿なことを言われてもハイッわかりましたと頭を下げてきた相手が・・

お願いしますのオンパレードなんですが・・。

まあ、しかしこっちだって確認申請を出す物がなけりゃあどうしようもない。

っていうか、確認申請は物件によって現地の場所や建物の種別・規模なんかによって出す審査機関を変えますから・・

そんな営業されても、建材みたいに面白いね使ってみようか、なんてわけにはいかんのです。

 まあ、しかしこの大不況・・

審査機関ですら仕事が激減しているようで・・

背に腹は代えられないのでしょう。

どうせこんなのは景気の悪い今だけなのは間違いありません・・

しばらくはこの立場逆転を楽しみたいと思います。

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