ペルー人犯罪人引渡請求の可否 - 外国人トラブル - 専門家プロファイル

今林 浩一郎
今林国際法務行政書士事務所 代表者
東京都
行政書士

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ペルー人犯罪人引渡請求の可否

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「群馬県太田市で2001年、シルバー人材センター嘱託の木村唯雄さん=当時(69)=が公園のトイレで刺殺された事件で、群馬県警が国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配していたペルー国籍のディアス・サンチェス・リカルド・モイセス容疑者(43)が、ペルー当局に身柄を拘束」されました(7月8日付時事通信)。

 

ところで、日本政府は、本件に関し、ペルーに対しては初となる代理処罰を要請していました。なぜ日本政府が被疑者の引渡を請求しなかったのかを疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、現在、日本政府が犯罪人引渡条約を締結しているのは、米国と韓国の2カ国だけです。ですから、それ以外の国々は、国際法上、犯罪人の引渡義務を負うものではなく、国際儀礼上引き渡す場合があるだけです。

 

ところで、多くの国は、犯罪人引渡しを通常請求国の国民又は第三国の国民に限る自国民不引渡の原則なる慣行を採っています。この原則は必ずしも国際慣習法化しているとはいえませんが、日米犯罪人引渡条約5条も、「被請求国は、自国民を引き渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる」と規定しています。つまり、米国すらも、日米犯罪人引渡条約により、自国民犯罪人の引渡義務を負うものではなく、国際儀礼上引き渡す場合があるだけということになります。ですから、ペルー政府が自国民を引渡さないのは、必ずしも国際法上問題があるということではありません。

 

なお、日米犯罪人引渡条約は、日本人犯罪人が米国にいる場合でもすべての場合に引渡を認めている訳ではありません。勿論、殺人罪は引渡しの対象です(同条約2条1項前段・付表1)。日米犯罪人引渡条約は、引渡しの対象となる犯罪を付表に列挙しています。また、付表に列挙されていなくても引渡の対象となる犯罪もあります。この点に関し、日米犯罪人引渡条約2条1項は、「・・・付表に掲げる犯罪以外の犯罪であって日本国の法令及び合衆国の連邦法令により死刑又は無期若しくは長期一年を超える拘禁刑に処することとされているものについて行われる」と規定します。ここで注目するべき点は、両国の法令で規定される犯罪のみが引渡しの対象になるということです。

 

しかしながら、日米犯罪人引渡条約が引渡しの対象としていない犯罪もあります。例えば、付表3「悪質な傷害」及び付表21は「暴行又は脅迫による業務妨害」を列挙します。すなわち、「悪質でない」傷害(刑法204条)及び「単なる威力又は偽計」業務妨害罪(刑法233条)は引渡しの対象になりません(威力と暴行・脅迫は同義ではありません)。ちなみに、偽計業務妨害罪は、米国の入管法上の入国拒否事由にも該当しません。これは英米法の規定する犯罪構成要件と日本刑法の規定する犯罪構成要件が必ずしも一致しないからです。

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