弁護士大観を総覧してみると、韓国系・中国系弁護士名が散見される一方、横文字の欧米系弁護士名は皆無に近いことがわかります。勿論、外国法事務弁護士には欧米系弁護士名が多数見られます。このことは欧米系外国人にとって日本の司法試験に合格することが至難の業であることを示唆しています。この点、米国弁護士の国籍・人種が多種多様であるのとは大きく異なっています。特にニューヨーク州弁護士は人種のルツボです。
思うに、日本語が欧米系外国人には修得しにくいこと、欧米系外国人にとって日本において大変な苦労までして司法試験に合格して弁護士資格を取得する必要性が低いこと、日本の政治的・文化的・宗教的環境が欧米人にとって順応しにくいこと、等が理由として考えられます。特に、世界経済の中心であるニューヨークにおいてニューヨーク州弁護士として活動することは世界各国の弁護士にとって企業活動を支援するという点からも重要な意義があります。一方、その逆に東京には外国弁護士が苦労して日本の弁護士資格を取得して企業を支援する程の経済的な重要性はないと思われます(外国法事務弁護士は主に原資格国法を担当します)。
以下の事実は、特に注目に値します。すなわち、以前には外国籍を有する者は司法試験に合格しても、最高裁判所に司法修習生として採用される際に国籍条項による制限がありました。それゆえ、日本国籍を有する者しか原則的に司法修習生として司法研修所に採用されず、最高裁判所が例外的に適当と認める者を司法修習生として司法研修所への入所を認めるという形式になっていました。この点に関し、最高裁判所は、司法試験合格者が司法研修所で実務修習を受ける際に、検察庁での刑事実務や裁判所での裁判実務修習に参加する機会があり、「公権力の行使や国家意思の形成に携わる公務員には日本国籍が必要」との政府見解を準用して、外国籍の司法試験合格者には日本国籍取得を条件に修習生として採用することを慣例としていました。このような国籍条項は外国人に日本の法曹界の閉鎖性を印象付け、外国人が日本の弁護士資格を取得することを嫌気させる一因となったことでしょう。
ところが、最高裁裁判所は2009年11月に修習を開始する司法修習生から司法修習生採用選考要項の「国籍条項」を削除しました。これは在日外国人や日本弁護士連合会などが国籍条項を外国人に対する不当な「差別だ」として長年に渡り条項の削除を求めてきたことに原因があります(憲法第14条参照)。確かに、国籍条項の削除は、外国人が日本の弁護士資格を取得する機会を拡大したとはいえますが、これが必ずしも欧米系外国人の日本法曹界への参入の機会を開放したとはいえません。まず、欧米系外国人から日本の法曹界が閉鎖的であるという印象を払拭するには相当時間がかかると思いますし、欧米系の外国人に対しては未だ事実上の障壁が存在すると思います。
米国における外国法事務弁護士制度(http://blogs.yahoo.co.jp/marvellous157/2789770.html)
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