Bilski v. Kappos ビジネス特許の審査ガイドライン - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

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Bilski v. Kappos ビジネス特許の審査ガイドライン

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Bilski v. Kappos ビジネス特許の審査ガイドラインについて

河野特許事務所 2009年8月27日 執筆者:弁理士 河野 英仁

1.USPTO(米国特許商標庁)は米国特許法第101条*1に規定する要件を具備

するか否かの審査に用いる内部インストラクションを策定した。当該インストラクシ

ョンは、法定主題に関するMPEP2106(IV) 2106.01 及び 2106.02を含む以

前のガイドラインに取って代わるものであり、2009年8月24日以降の審査におい

て利用される。



 ビジネス方法を含む方法のクレームに対する米国特許法第101条の判断基準

を巡っては、現在最高裁におけるBilski v. Kappos事件にて争われている。次

回の審理は2009年11月9日に行われることが決定しており、来年の春頃に最高

裁が何らかの指針を示すものと予想されている。



 本インストラクションは暫定的なものであり、実質的な規則の制定を構成するも

のでなく、また、法的拘束力を有するものではないが、当面の間本インストラクショ

ンに則って米国特許法第101条の法定主題に関する審査が行われる。



2.インストラクションの内容は以下のとおりである。

 方法クレームが米国特許法第101条の要件を具備するためには、CAFC大法

廷で判示されたMachine-or Transformation test(機械or変換テスト、以下M-

or-T test)を満たさなければならない*2。



 以下に示す、フローチャートに基づき審査手順を説明する。



(1) Step1 機械テスト

 まず、方法クレームにおける当該方法が特定の機械に実装されることを要求し

ているか否かを判断する(ステップS1)。すなわち、機械テストを行うべく、方法ク

レームが特定の機械または装置と結びつけられているか否かを判断する。方法

が特定の機械に実装されていないと判断した場合(ステップS1でNO)、ステップ

S2の変換テストへ移行する。



 また、ステップS1において方法が機械を実装している場合(ステップS1でYES

)、ステップS3へ移行する。



(2) Step2 変換テスト

 変換テストにおいては、方法クレームにおける当該方法が特定物を変換するこ

とを要求しているか否かを判断する(ステップS2)。方法が特定物を変換していな

い場合(ステップS2でNO)、当該方法は米国特許法第101条にいう法定主題に

該当しない(ステップS5)。



 方法が特定物を変換している場合(ステップS2でYES)、ステップS4へ移行す

る。



 ここで、物(article)の「変換」とは、「物」が異なる状態(state)または物体(thing)

へ変化することを意味する。思考変化または人間の行動変化に見られる純粋な

思考プロセスは法定要件を満たす変換とはいえない。



 電子データに関しては、数学的操作そのものは法定要件を満たす変換とはいえ

ない。しかし、電子データの性質(nature)が異なる機能を有するように、或いは、

電子データの性質が異なる用途に適するように、当該電子データの性質が変化

する場合、電子データの変換と判断される。



(3) Step 3 直接導かれる命題

 クレームの方法が機械を実装している(ステップS1でYES)、または、後述する

如く方法が特定物を変換している(ステップS2でYES)としても、M-or-T testから

直接導かれる以下の2つの命題を満たさなければならない。



 2つの命題は以下のとおりである。

(i) 第1命題:特定機械の使用、または、特定物の変換はクレームの範囲に意味

のある制限を課さなければならない。よって単なる使用分野制限(field-of-use

limitation)における機械の結び付けでは十分でない。



 「使用分野」の制限とは、例えば、方法クレーム中に、

「for use with a machine機械と共に使用するために」、または

「for transforming an article物を変換するために」等の使用分野を単に限定

するに過ぎない記載を意味する。かかる「使用分野」の制限はクレーム発明の範

囲に現実的な制限を課すものではない。



 形式的に機械または変換の文言が記載されていたとしても、当該クレームは、

機械が方法を実装することを必要としないものであり、または、方法のステップが

物を変換させることを必要としないものであることから、第1命題としての要件を課

したものである。



(ii) 第2命題:特定機械の使用または特定物の変換は、意味のない「余分な解決

」動作(insignificant “extra-solution” activity)以上のものを含まなければなら

ない。



 意味のない余分な解決動作とは、出願人により発明された方法の目的の中心

とならない動作を意味する。例えば、方法の全ての適用(applications)が、何らか

の形態でデータ収集を必要とする場合、当該方法において使用するデータを収集

することは、クレームにおいて意味のある限定を課すものとは言えない。



 ステップS3においては、以上述べた「特定機械の使用がクレーム範囲に意味

のある限定を課しているか否か?(使用分野制限ではないか?)」、かつ、「機械

の使用が意味のない余分な解決動作ではないか?」が判断される。ステップS3

においてYESの場合、米国特許法第101条にいう法定主題の要件を満たす(ス

テップS6)。一方、ステップS3においてNOの場合、ステップS2へ移行する。



(iv) Step4 直接導かれる命題

 ステップS4ではステップS3と同様に、変換がクレーム範囲に意味のある限定

を課しているか否か?(使用分野制限ではないか?)、かつ、変換が意味のない

余分な解決動作ではないか?を判断する。



 ステップS4においてNOの場合、当該方法は米国特許法第101条にいう法定主

題に該当しない(ステップS5)。ステップS4においてYESの場合、当該方法は米

国特許法第101条にいう法定主題に該当する(ステップS6)。

【関連事項】

原文は以下のページからダウンロードできます[PDFファイル]。

http://pub.bna.com/ptcj/PTO101GuidelinesAug24.pdf

http://pub.bna.com/ptcj/PTO101FlowchartAug24.pdf

http://pub.bna.com/ptcj/PTO101FlowchartBilskiAug24.pdf



【注釈】

*1 米国特許法第101条は以下のとおり規定している。

第101条

新規かつ有用な方法,機械,製造物若しくは組成物,又はそれについての新規

かつ有用な改良を発明又は発見した者は,本法の定める条件及び要件に従っ

て,それについての特許を取得することができる。

特許庁HP

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htm

参照。

*2 In re Bilski 545 F.3d 945 (Fed. Cir. 2008)

詳細はhttp://www.knpt.com/contents/cafc/2008.11/2008.11.html

を参照。



                                          以 上