米国判例:均等論におけるFunction-Way-Result Test-6- - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
弁理士

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:企業法務

村田 英幸
村田 英幸
(弁護士)
尾上 雅典
(行政書士)
河野 英仁
(弁理士)

閲覧数順 2024年04月18日更新

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

米国判例:均等論におけるFunction-Way-Result Test-6-

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 企業法務
  3. 企業法務全般
   米国特許判例紹介:均等論におけるFunction-Way-Result Test
      〜均等論のFunctionと特許表示〜(第6回) 
          河野特許事務所 2009年6月26日
                      執筆者:弁理士  河野 英仁

           Crown Packaging Tech., Inc., et al.,
                    v.
              Rexam Beverage Can Co.,

4.CAFCの判断
(1)争点1: 被告が主張する機能に関する証拠が提供されていない
 CAFCは、被告弁護士が第2機能及び第3機能を主張したものの何ら現実の証拠が提出されていないことから、環状補強ビード25について「重要事実に関する真正な争点(genuine issue of material fact)」の存在を理由に、再度地裁にて審理を行うよう命じた。

 原告専門家は、環状補強ビード25が、密閉する缶蓋の圧力抵抗を増加させる機能(第1機能)を発揮することを立証した。第1機能に関しては被告専門家も第1機能を発揮することを認めている。

 原告は、環状補強ビード25が第1機能のみを発揮すると主張したところ、被告は環状補強ビード25がさらに第2機能及び第3機能を発揮すると主張した。そして、イ号製品は第2機能及び第3機能を発揮しないことから、地裁が判示したとおり均等論上非侵害であると主張した。

 しかし、第2機能及び第3機能は被告弁護士による主張があっただけであり、何ら現実の証拠が提出されていない。当事者間でFWRテストにおける共通の第1機能を発揮するにもかかわらず、現実の証拠がない第2及び第3機能をもって均等論上非侵害とすることは妥当でないことから、CAFCは地裁の判決を無効とし、再度審理を行うよう命じた。

(2)争点2:方法クレームのみを権利侵害として主張する場合は、特許クレームの種別にかかわらず特許表示は不要である。
 CAFCは方法クレーム及び装置クレームが存在している場合でも、方法クレームのみを主張する場合は、特許製品に特許表示がなくとも、損害賠償は認められると判示した。

 CAFCは、特許表示規定の目的は、公衆に対し特許の存在を通知することを特許権者に奨励することにあり、また、特許表示規定が方法クレームに適用されない理由は、特許クレームが方法またはプロセスのみである場合に特許表示するところがないからと述べた上で、過去の判例を挙げた。

 American Medical System事件においては、方法クレーム及び装置クレームが特許に存在しており、特許権者はクレームされた方法による物理的な装置に特許表示を行っていなかった。このような状況下で、特許権者は、方法クレーム及び装置クレームの双方に基づいて特許権侵害を主張した。CAFCは、方法クレームに関し警告以前の損害賠償を得るためには、当該装置に特許表示を行わなければならないと判示した。

 またHanson事件においても、同様に方法クレーム及び装置クレームの双方が特許に存在しており、特許権者は装置に特許表示を行っていなかった。このような状況下で、特許権者は方法クレーム及び装置クレームの双方に基づいて特許権侵害を主張した。審理を進めた結果装置クレームに対しては非侵害、方法クレームのみが侵害と判断された。この場合、CAFCは装置に特許表示がなくとも方法クレームに基づき損害賠償を認めると判示した。

 以上のことから、本事件においてCAFCは当初から方法クレームのみを権利侵害として主張した場合は、Hanson事件に従い、特許に方法クレーム及び装置クレームの双方が含まれている場合でも損害賠償が認められると判示した。


5.結論
 CAFCは、均等論上非侵害と判断した地裁の判決を無効とし、機能に関し再度審理を行うよう地裁に命じた。またCAFCは特許表示を怠ったことに起因して損害賠償を認めなかった地裁の判決を無効とした。


                            (第7回へ続く)

 ソフトウェア特許に関するご相談は河野特許事務所まで