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〜均等論のFunctionと特許表示〜(第4回)
河野特許事務所 2009年6月2日
執筆者:弁理士 河野 英仁
Crown Packaging Tech., Inc., et al.,
v.
Rexam Beverage Can Co.,
3.CAFCでの争点
(1)争点1:複数の機能が存在する場合、均等論をどのように適用するか?
原告は、839特許従属クレーム14は以下のとおりである。なお、被告が特許権侵害を認めた独立クレーム13は注釈欄に原文を記した。
クレーム14
クレーム13の缶蓋22であり、
前記第2ポイントにて前記壁24に接続される環状補強ビード25(annular reinforcing bead)をさらに含み、前記環状補強ビード25は前記壁24を前記センターパネル26に結びつける。
なお、符号は筆者において追記した。図4は被告イ号製品の要部を示す断面図及び拡大図である。図5はクレーム14の環状補強ビード25の断面図及び拡大図である。
図4 被告イ号製品の要部を示す断面図及び拡大図
図5 クレーム14の環状補強ビード25の断面図及び拡大図(Fig.4.)
図5に示す如くクレーム14の環状補強ビードは下向きに突出しており、壁24とセンターパネル26とを結びつけるものである。これに対し、イ号製品の折り曲げ部(fold)は図4に示す如く、壁とセンターパネルとの間に存在するものの、壁とセンターパネルとは直接結びついている。
原告はイ号製品がクレーム14の文言上の侵害とならないことから、均等論上の侵害を主張した。原告の専門家証人は、環状補強ビード25は、密閉する缶蓋の圧力抵抗を増加させる機能(以下、第1機能)を発揮すると主張した。被告は環状補強ビード25及びイ号製品も当該第1機能を発揮することを認めた。
しかしながら、被告は、環状補強ビード25はさらに、缶蓋22のセンターパネル26を支持する機能(以下、第2機能)、及び、密閉用チャック30が上側から入り込む開口を提供する機能(以下、第3機能)を発揮すると主張した。被告イ号製品は第2機能及び第3機能を発揮しないことからFWRテストにいう「機能」要件を満たさないと反論し、地裁も当該被告の主張を認めた。
このように、均等論のFWRテストにおいて、イ号製品が一部の機能を発揮するものの、他の機能を発揮しない場合に、均等といえるか否かが争点となった。
(第5回へ続く)