- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
産業廃棄物税の導入状況
産業廃棄物税の導入状況を都道府県別に表すと、上記の画像のとおりです。
導入済みの自治体を下記に列挙します。
北海道 北海道
東北 青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島(地域内100%)
関東 未導入
北陸 新潟
東海 愛知、三重
近畿 滋賀、京都、奈良
中国 岡山、広島、鳥取、島根、山口 (地域内100%)
四国 愛媛
九州 福岡、佐賀、長崎、大分、鹿児島、熊本、宮崎、沖縄
(地域内100%)
と、北海道・東北、中国、九州地域は、そのブロック内のすべての都道府県が産業廃棄物税を導入済みです。
産業廃棄物税の問題点
産業廃棄物税を導入したからといって、産業廃棄物の排出抑制が進むわけではないことは、前回のコラム「産業廃棄物税とは」でご説明したところです。
今回はその他の問題点
「産業廃棄物税の使途」について触れておきます。
産業廃棄物税は、それを導入した自治体にとって貴重な財源となっているのは間違いありませんが、それを何に使っているのかを具体的に情報開示している自治体はそれほど多くありません。
※岩手県は、かなり細かく情報開示をしています。
http
産業廃棄物税を導入した際の説明資料などを調査すると
多くの自治体は、産業廃棄物税の税収を
1.廃棄物の排出抑制の支援
2.リサイクルの推進
3.産業廃棄物監視強化
などに充てると明言しています。
※例 奈良県
http
確かに、「不法投棄などの監視」は、行政が行うべき義務の一つであります。
しかし、それは行政本来の義務であり、言い換えれば、行政が最初から経費を負担するべき仕事です。
元々行政が負担すべきコストを、不法行為を行う犯罪者からではなく、適正に廃棄物を処理している排出事業者や、処理業者に転嫁しているわけですから、本質的には筋違いの話になります。
わかりやすい例でお話しすると
「最近、この地域では空き巣の出没が続いているので、地域の方には、警官のパトロール費用として、1世帯あたり1万円を負担してもらいます」
と、警察が各世帯に負担金を徴収に回っているようなものです。
行政の監視コストを弁済すべきは、行政に余計なパトロールをさせている「不法行為者」であるはずなのですが、不法行為者を見つけることは非常に困難ですし、運良く見つけたとしても、素直に廃棄物の撤去などに応じることは稀です。
「だったら、廃棄物を発生させている大元の排出事業者から、お金を集めるしかない」
ということで、真面目な排出事業者や処理業者が、産業廃棄物税という名目で、行政の監視コストを負担させられているわけです。
産業廃棄物税を導入済みの自治体当局は、文句を言わずに延々と税金を払ってくれる納税者に対して、具体的な税収の使途を公開してもばちは当たらないと思うのですが・・・