中学入試に出た「シンギュラリティ」
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「シンギュラリティ」という言葉を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。
人工知能(AI)が人間の知能を超える転換点として、ときどき話題になります。
このシンギュラリティが、2020年度の鷗友学園女子中学高等学校の社会科の入試問題で出題されました。その問題文は、次のようなものです。
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「シンギュラリティ」は起こらないと考える人は、なぜ、そのように考えるのでしょうか。AIにとって不得意であり、人間にとって得意だと思われることに触れながら、答えなさい。
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この問題に取り組むためには、子どもと日々接する大人の普段の姿勢が大事だと思います。
ポイントは2点。
1. 日常生活には関わりのないシンギュラリティという話題について、大人としてよく情報収集し、自分の意見を持っていること
2. シンギュラリティの概念を理解するにはまだ早いとも思える学齢の子どもに対しても、それに関心を持てるように家庭で話題にあげていること
その中学を受験しないとしても、子どもが社会のことを知るために、社会で話題になっていることを子どもと話し合えるようにするためには、親としても準備が必要になりますね。
私の意見としては、「正解を見つける」ということに関しては、シンギュラリティは既に起こっているのではないかと思います。最近は学習教材でAIが個人の苦手を分析して最適な問題を提供するものですとか、営業マンに対してAIが最適な訪問ルートとセールストークを提供するものなどがありますが、そのようなサービスを考えなしに受け入れてしまう人は、「AIはいつも正しい」という思考になってしまう恐れがあるように思います。
しかし、そのような場面は人間の活動のほんの一部分です。
AIの強みは「分類すること」に他なりませんから、そうではないものについては、シンギュラリティは起こり得ないでしょう。
たとえば、家庭教育の視点で大切なのは、自分の家が重視する価値観を定め、その手本となる行動を親が自ら示すことですし、社会教育で大切なのは、芸術や文化を愛でる心を養うことです。どちらも、何かを分類して終わりというものではありません。
大切なのは、一つの観点では人間をはるかに超える技術が現れたとき、その技術を理解し、使いこなそうとすることでしょうね。
ちなみに、学校が用意した正解は、
「AIは,情報を累積し確率に基づき行動を選択するため,予想外のできごとへの対応が不得意であるが,人間は,何もないところから創造することや考えることが得意である。そのため,シンギュラリティはおこらないと考える。」
でした。
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