コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(第10回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(第10回)

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コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性
 〜精神活動が含まれる歯科治療システムの発明〜(第10回) 
河野特許事務所 2009年2月25日
執筆者:弁理士  河野 登夫

 1.1「発明」に該当しないものの類型
中の自然法則の利用性の判断に関する注記に示されている。
 ところで,「物の製造方法」など,コンピュータ・ソフトウェア関連以外の方法の発明では「人間の行為」が発明特定事項に含まれることは普通に存在するし,人間の行為によるか,機械によって行われるかが明確ではなく,どちらも含み得る記載であったとしてもそれによって発明の成立性が問題になることは少ない。
 しかしながらコンピュータ・ソフトウェア関連の「システム」発明の審査実務においては,発明特定事項に「人間の行為」,「人間の精神活動」など人間を含む概念が含まれている場合,本件事案と同様に特許法29条1 項柱書違反,とする拒絶理由がまず発せられる。審査の最初の段階で「全体として判断する」ことで自然法則の利用性が認められることはまずない。「全体としての判断」は,あくまでも,自然法則の利用性を否定された拒絶理由に対する反論の論拠と考えておくのがよいであろう。なお,「審査基準」では「どのような場合に,全体として自然法則を利用したものとなるかは,技術の特性を考慮して判断する」とされている。
 さて,コンピュータ・ソフトウェア関連の「システム」の場合,この「システム」という「物」の一部が「人間」によって構成されることはあり得ない,という常識的観点からは,「全体として判断」したところで自然法則の利用性の存在を主張するのは難しい。このような「システム」の一部が「人間」によって構成されていると認定された拒絶理由に対しては「○○する手段」がコンピュータによって実現され,人的要素が排除されていることが明らかになるような表現に補正することで拒絶理由が解消する,と考えておけばよい。
 本判決では「システム」に関し,「広辞苑」を引いて「その要素として人が排除されるというものではない」と認定している。「システム」の一般的定義ではその通りであるが,特許法では,「自然法則の利用性」の観点から,一般的な「システム」として定義されるもの全てを「発明」と認める訳ではない。たとえば,「特定の野球チームが優勝した場合に金利を上乗せする」などの預金制度は「預金の一システム」として辞書的定義では認められるものではあるが,「人為的な取り決め(優勝という制度),及び経済法則または人為的取り決め(金利)」を利用している(自然法則を利用していない)と言うことで発明の成立性は認められないのである。

(第11回に続く)