KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか(4)(第4回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか(4)(第4回)

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KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(4)(第4回)
〜阻害要因(Teach Away)があれば自明でない〜  
河野特許事務所
米国特許判例紹介
Andersen Corp.,
Plaintiff-Appellant,
v.
Pella Corp. et al.,
Defendant-Appellee.
                       
                       2009年1月27日 弁理士 河野 英仁
                
 
4.CAFCの判断
 はじめに自明性の判断手法について簡単に説明する。
 米国特許法103条(a)は、
「発明が第102条に規定された如く全く同一のものとして開示又は記載されていない場合であっても,特許を得ようとする発明の主題が全体としてそれに関する技術分野において通常の技術を有する者にその発明のなされた時点において自明であったであろう場合は特許を受けることができない。」 と規定している。

 自明か否かの判断においては、Graham最高裁判決において判示された下記事項を検討する。
(a)「先行技術の範囲及び内容を決定する」
(b)「先行技術とクレーム発明との相違点を確定する」
(c)「当業者レベルを決定する」
(d)「2次的考察を評価する(商業的成功等)」
 これらを総合的に考慮して当業者にとって自明か否かを判断する。

(1)先行技術の範囲に属しない
CAFCは、TWPメッシュは先行技術の範囲に属さないと判断した。TWPのWebサイトには「防虫網」及び「高透過スクリーン」に関する技術情報が掲載されていた。612特許に用いたTWPメッシュは「防虫網」のページ内に存在せず、電磁遮蔽用の「高透過スクリーン」のページに存在していた。

 CAFCはTWPメッシュが主に電磁遮蔽用に用いられるものであり、防虫網に使用されたことがないという事実に鑑みれば、防虫網を設計する当業者が係るTWPメッシュを防虫網に適用するとは考えないと述べた。

(2)阻害要因(Teach Away)が存在する
CAFCは、耐久性、透過性及び価格の3つに基づき、窓枠用の防虫用網にTWPメッシュを適用することには阻害要因が存在すると判断した(図3参照)。

図3 阻害要因を示す説明図

 防虫網は風雨及び日光にさらされ、また人間及びペットによる損傷にさらされるため、十分な耐久性が必要とされる。一方、TWPメッシュはTWPのWebサイト内で「世界で最もデリケートな金属繊維」、また「取り扱いには特別な注意を要する」と記載されていた。このように脆弱でありまた取り扱いに注意を要するTWPメッシュは、防虫網設計者が網の材料として使用することの妨げとなるものである。

 また本発明では、審美性のため透過性が要求されるところ、TWPメッシュのワイヤ格子は非常に微細であり光学的干渉を生じる虞がある。従って透過性が要求される防虫網にTWPメッシュを適用することは当業者にとって妨げとなるものである。

 さらに、TWPメッシュは一般的な防虫網に対し極めて高価であり、防虫網を設計する当事者がTWPメッシュを採用することの妨げとなるものである。

 CAFCは以上の理由により、防虫網にTWPメッシュを採用するに際し、阻害要因が存在すると判示した。

(第5回につづく)