トヨタ大政奉還 - 経営戦略・事業ビジョン - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士

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寺崎 芳紀
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(経営コンサルタント)
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閲覧数順 2024年04月26日更新

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トヨタ大政奉還

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雑感 業務その他
10日8時5分産経新聞オンライン記事は以下のように報じ、
トヨタ自動車の新社長に創業家出身の豊田章夫副社長が
昇格することを伝えた。


販売不振にあえぐトヨタ自動車は9日、6月下旬に豊田章夫副社長が
社長に昇格する人事を固めた。14年ぶりに誕生する創業家出身社長は、
急速に縮小しつつある名古屋経済にとっても切り札となる。

トヨタの赤字転落に伴い、トヨタ本社のほかに7工場が立地する
豊田市では来年度の法人市民税収が約400億円減と今年度に比べて
9割も減る。好調トヨタに支えられ、過去3年連続で地方交付税の
不交付団体だった愛知県は実質的な財源不足は3500億円以上になるという。
名古屋のヒト、モノ、カネはやはりトヨタが支えていたのだ。

かつて豊田家出身のトップが現場を視察したとき、直立不動で
出迎えた工場長は「ご苦労さん」と声をかけられて涙ぐんだ。
生産現場と管理部門をつなぐこの求心力こそが創業家の強みだ。
文字通り「原点回帰」で全社一丸となって難局打開ができるかどうか。
名古屋にとっても、日本経済にとっても重大な関心事だ。



リーマンショックに端を発した世界同時株安、金融不況は、
急激な円高を生み、その結果、トヨタ自動車は、
連結決算開示以来初の営業赤字転落の憂き目を見た。

その後は、他社同様、非正規社員のリストラを行い、
早急な体制建て直しを図っているところである。

経費削減努力は、業績修正を公表した記者会見にも表れている。

トヨタ自動車の年末記者会見は例年名古屋市内のホテルで
行われていたが、今年は、トヨタ名古屋オフィスの会議室であった。

なりふり構わぬ財務リストラの姿勢を示したものであろう。

このような状況で、トヨタ自動車は、待望論が出ていた章夫氏への
大政奉還を決断したのである。


昨年末12月24日の日経ビジネスオンライン記事は以下のように報じる。

取締役に就任して以降も、異例のスピードで昇進を続ける章夫氏に
対して「大政奉還はいつか」との見方はずっとついて回ってきた。
クルマ好きとして知られ、排気量5000cc、423馬力という大出力エンジンを
搭載するスポーツカー「レクサスIS-F」の開発にも自らかかわった。
一方、調達部門を担当すれば各地の部品メーカーに自ら足を運び、
営業担当になれば販社との関係強化に力を注ぐ。
「偉ぶったところもなく気さく」というのが人物評だ。

未曾有の危機に直面した今、章夫氏に求められているものは
「トヨタの旗」として求心力を発揮することだ。そんな願いが
トヨタ社内のほか部品メーカーや国内販社からも出ている。
IMVや中国事業など章夫氏が手がけたプロジェクトは総じて
成功を収めたというのがグループ内での評価だ。
その手腕をもって、これから切り込まなければならない聖域なき改革に
チャレンジする。それが創業家トップ誕生にかかる期待である。



トヨタのプリンスとして順風満帆に育てられてきた章夫氏が
これからの難局に乗り出していくことになった。
気さくな人柄から、多くの方々から貴重なご意見を賜る機会も多いであろう。

しかし、これまでとは異なり、最終決断をつけなければならない立場になる。
その孤独にどこまで耐えられるか。

政界のプリンスとして苦労を知らずに首相まで上り詰めてしまった
お友達内閣の首相の二の舞にならないよう、
周囲のご意見番たちの役割がより重要になってくるのであろう。

厳しい時代だからこそ、また、厳しいリストラを内外に納得させるためにこそ、
トヨタは切り札とも言うべき章夫氏の登板を決断したはずである。

この点において、世襲の強みを生かせる経営ができるか、
それとも、世襲のマイナス面が目立つのかは、これからの
章夫氏の対応がその評価を決めることになるであろう。

親や親族の苦労を小さいときから目の当たりにしているからこそ
生まれる覚悟のようなものが発揮できるかどうか。

成功する2代目と失敗する2代目の分かれ道である。

中小企業の皆様も、自分の後継者を決めるときには、
子供だから後を継がせるという考え方ではなく、
親の責任も含めて覚悟を決められる人物であることを確認できれば、
これほど力強い後継者はいないと信じて後継者を決めたいものです。