慚愧の念と貧瞋癡
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「慚愧の念に堪えない。」
と、こんな言葉を政治家などが言っているのを聞いたことがありませんか?
よく「残念でならない。」というような意味に取られることがありますが、「慚愧(ざんき)」というのは仏教用語なのです。
昔、こんな記事を書いたことがあります。
【二種類の恥】http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-11421737909.html
上記の記事で説明している内面の恥を「慚」外面の恥を「愧」と言うのです。
また、慚愧の話しの続きで以下のような記事も書きました。
【恥を知り良馬になる!】http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-11952209563.html
ここで一つ注意しなければいけないのは、慚愧で言う恥とは、自己嫌悪や自己批難ということに繋がるものではありません。
自分で勝手に理想や決まりごとを作って、理想の自分と現実の自分が合わないから自分を責める…というのは、内面の恥というものとは、似ていて非なるものです。
自分の理想を勝手に作り、それと照らし合わせて恥じるというのは、それもまたエゴからくる恥ということになります。
では、内面で自分と照らし合わせるものは何なのか?
それは「真理」なのです。
要するに、内面の恥というのは、真理を知らない、実践出来ていない…ということです。
真理というのは、この世の道理です。
今の自分は道理に沿って生きているのか、それとも道理に反して生きているのか…。
照らし合わせるためには、まず真理を知らねばなりません。
話しは変わりますが、仏教で「貧瞋癡(とんじんち)」と言われる言葉があります。
三毒とも呼ばれますが、人の心を毒すものだと言われています。
三毒それぞれの意味は次のようなものです。
貪欲(とんよく)…貪る心
瞋恚(しんに)…憤る心
愚癡(ぐち)…愚かな心
貪欲は、あれこれと欲張って貪るということです。
瞋恚は、自分の思い通りにいかず怒るということです。
それらの心が何故、起きてくるかというと真理を知らない愚かな心がある故です。
愚癡というのは、別の言い方をすれば真理を知らないということなのです。
真理を知らない愚かな心が故に、自分のことばかり思い量って貪るようになり、思い通りにいかないことに怒る気持ちが現れてくるということになります。
ここで「慚愧」という恥じる心が繋がってきます。
真理を学び、それに従って生きているかどうか内面を見つめ直し、出来ていない自分を恥じ、反省しながら精進していくようになります。
それが身に付いてくることを「智慧が身に付く」というように言います。
智慧が身に付いてくると、もう愚かな心ではありませんから、愚癡が無くなってくるということになりますね。
すると、貪欲も瞋恚も愚癡から起きているわけですから、欲張る気持ちも、怒る気持ちも、自然と薄まっていくというわけです。
仏教は欲が悪いことのようにイメージされることが多いようです。
欲張る気持ちや怒る気持ちを抑えて生きていくように思われますが、実はそうではなく、自然と薄くなっていく…というのが正しいのです。
心に根付いた貧瞋の心を無理やり抑えるということではなく、真理を知って実践し、智慧を身に付けていくことで無くなっていくものです。
些細なことで怒ったり、ちょっとしたことで不安になったり…。
真理を説きながら、欲や怒りなどの煩悩が抜けないというのは、まだまだ真理が身に付いていないということの証拠でもあります。
いざ自分を見つめてみたら全然実践出来ていなくて恥ずかしい…。
それを「慚愧の念に堪えない」と言うのです。
「じゃあ、真理ってなんだ?」
という話しになってきますが、一言で言えば「空(くう)」ということになるでしょうか。
その「空」という思想を聞いただけでは、よく分からないのです。
何度も聴いて実践していく内に、少しずつ腑に落ちていくものです。
聴いて分かったつもりになるのが一番怖いことで、本を読んだり、人の話しを聴いたりしただけでは何も分からないのですよね。
仏教は実践の学問ですから、いくら知識を詰め込んでも、真理という智慧が付いたとは言えません。
智慧のある人かどうかというのは、その人の行動を見ていたら自ずと解るものなのですよね。
潜在意識まで智慧が身に付いた人は、表層意識が変わってきます。
だから、智慧のある人が見たら、すぐに判別が付くようになります。
そういう自分になるために、真理を学んで、慚愧の心を持ちながら実践を続けていく必要があるのですよね。
私もまだまだ未熟です。
こんな話をするのも本来は恥ずかしい話なのですが、同じ方向を目指す人がいたら、共に歩んでいけたら有り難いことだなぁと思います。
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