「商標」の類似 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士

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「商標」の類似

他人の商標と同一または類似の商標は、登録を受けることができない(商標法4条1項10号、11号,12号,15号,16号、19号、商標法5条)。そこで、商標の類似が問題となる。

(商標登録を受けることができない商標)

第4条1項  次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

  他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標・これに類似する商標であって、その商品・役務又はこれらに類似する商品・役務について使用をするもの

十一  当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標・これに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品・指定役務(第6条第1項(第68条第1項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品・役務をいう。)又はこれらに類似する商品・役務について使用をするもの

十二  他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。)と同一の商標であって、その防護標章登録に係る指定商品・指定役務について使用をするもの

十五  他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標(第1号から前号までに掲げるものを除く。)

十六  商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

十九  他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一・類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

  第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。

最高裁昭和31・7・3、コーラコーラ事件

「Coca Cola」なる文字で示した商標と「Cola Cola」なる文字の部分を要部とし、これと図形、記号との結合、着色による商標とは、称呼上および外観上類似し、両商標は「類似ノ商標」というべきである。

最高裁昭和35・10・4、シンガーミシン事件

「シンガーミシン」がその呼称で世界的に著名な裁縫機械として取引されているという取引事情の下では、裁縫機械を指定商品とする商標「シンカ」と「シンガー」とは類似するものと認めるべきである。

商標の類似判断

最高裁昭和36・3・26

一つの商標から二つの称呼を生ずるものと認定しても差支えない。

判決文によれば以下のとおりである。

 商標の一部が圧倒的に重要であり他の部分が附加されているに過ぎないような場合は格別、本件出願商標のような図形においては、二つの称呼が出ることも考えられないことではない。原判決が、右商標について、「亀甲」の称呼、観念を生ずるとともに、「三桝」の称呼、観念を生ずる旨を認定したことをもつて違法とすべき理由はない。

最高裁昭和38・12・5、リラ宝塚事件

一 1個の商標から二つ以上の称呼、観念が生ずる場合、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一または類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商法のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である。
二 石鹸を指定商品とし、リラと呼ばれる抱琴の図形と「宝塚」の文字との結合からなる商標は、判示のような事実関係のもとにおいては、リラ宝塚印の称呼、観念のほかに、単に宝塚印なる称呼、観念も生ずるから、同じく指定商品を石鹸とする商法「宝塚」と類似するものと認めるべきである。

特別顕著性―自他識別性

最高裁昭和50・4・8、雷おこし事件

いわゆる「雷おこし」に関する商標中の「雷おこし」の文字及びこの文字に添えて描かれる雷神等の図形につき、なんら商品の出所を表示するに足りる特別顕著性がないとされた事例

判決文によれば以下のとおりである。

 原判決は、いわゆる「雷おこし」(又は「雷おこし」。以下単に「雷おこし」という)につき、その由来、江戸時代末期から本件審決当時までの製造販売に関する実情、品質形状、浅草等の風物に関する文献・辞典類等における取扱い等に関して事実認定したうえ、右各事実によれば、おそくとも本件商標の登録出願がされた昭和11年頃には、当該取引業者たると需要者たるとを問わず、「雷おこし」の名称をもって、何びとか特定の業者の商品にのみ用いられるべき商標であると認識する者はなく、古くから浅草雷門附近で製造販売されてきた認定のような品質形状のおこしを指称する普通名称として、このような商品に付して自由に使用される語であると一般に認識され、そして、「雷おこし」の語に添えて古くから右の商品の包装、看板などに描かれ用いられてきた雷神等の図形も、それ自体は、「雷おこし」の文字と併用されることにより、雷おこしという商品を印象づけるにすぎない、何びとも自由に使用しうる慣用的な図形として一般に認識されていたというべきであり、そのような世人一般の認識は、本件審決の当時においてもなお存在していたというべきであるから、本件商標の構成中の「雷おこし」「元祖」「浅草雷門角」の文字と、雷神、連鼓、雷光、雲、寺院の堂塔等の図形は、それら個々のものとしてはなんら商品の出所を表示するに足りる特別顕著性がないとし、結局、本件のイ号、ロ号各標章は本件商標の権利範囲に属するものではないとしているのである。

(注)特別顕著性は、旧商標法の条文の用語である。現行商標法の講学上の用語では、「自他識別性」という。

現行商標法では、登録要件である商標法3条1項1号(普通名称)または2号(慣用商標)に該当し、かつ商標法3条2項には該当しないから、商標登録できない。