第4章 裁判官はなぜ怒ったのか(9) - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

羽柴 駿
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(弁護士)
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閲覧数順 2016年12月04日更新

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第4章 裁判官はなぜ怒ったのか(9)

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(第9回)                     

 このように調査をしているうちに、第1回公判の期日が近づいてきました。第1回公判では起訴状に書かれてある公訴事実(被告人が犯したとされる犯罪事実)に対する認否等、事件に対する弁護人の基本方針を示す必要があります。
 私は検察官の開示記録を読んだ段階ではまだ、無罪を主張すべきかどうか迷っていました。K子ちゃんが、Cさんが見たときに立っていた地点(図4ア地点)からBさんが見たブロック塀の陰からダンプカーの前に飛び出すまで、どんな経路をたどってきたのかが不明な為です。本当にY運転手から見えなかったのか、それとも、サイドミラーやアンダーミラーで発見できる位置にいたのに、見落としたのかが、はっきりしていなかったからです。
 しかしBさんの話をもとに計算してみると、時速5キロメートル(秒速1.4メートル)で進むダンプカーが発進してくると、2〜3秒後、つまり3〜4メートル進んだ時にK子ちゃんがブロック塀の陰から走り出たことになります。ということは、もし発進時に既にブロック塀のあたりにK子ちゃんがいたとしたら、当然Y運転手の肉眼の視野に入っていたことになり、肉眼での視野に入っている子供にまでY運転手が気がつかないことはありえないはずです。
とすると、やはりK子ちゃんは発進時には車体の後ろか、あるいは右側方にいて、発進してゆっくりと進行するダンプカーの右側を走って追い抜きざま、直前を横切って反対側へ行こうとしたのではないでしょうか。K子ちゃんが横切って進もうとした方角には知人と立ち話をしている母親がいることも、この推測を裏付けることになります。
 このように考えを重ねた結果、私はこの公判に望む基本方針として、被告人には過失がないこと(否認)、事故はダンプカーの発進時ではなく進行中に生じたものであること、の2点を主張していくこととし、Y運転手やA社長にも了解してもらいました。
                                   (次回へ続く)