相続で取得した不動産を有利に売買する方法~取得費加算の特例~
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- 公開日時
- 2011/05/13 15:00
相続手続き中には様々な理由により現金が必要なことから、例えば相続した不動産を売却して現金に変えることはよくあることだと思います。もし、あなたが相続発生から3年10ヶ月の間に相続財産を売却されるなら、ぜひとも知っておきたい特例として「取得費加算の特例」があります。
例えば、不動産を相続したために「相続税」を支払い、更にその不動産の処分のために、また「譲渡所得税」が丸々全額にかかってくるのであれば、税負担がとても重くなってしまうため、「相続税」を支払った分「譲渡所得税」の一部を免除して、税負担を軽くしてあげようというのが、この特例の主旨です。
簡単な概要は以下の通りです。
1)相続開始から3年10ヶ月以内に相続財産を売却していることが条件。(契約が完了していれば、実際の引き渡しが期間外でも適用可)
2)売却した資産に対応する相続税を、譲渡益より控除。
3)ただし、売却した資産が土地の場合には、売却した土地のみならず、相続した土地すべてに対応する相続税も控除される。
相続財産を売却した翌年の確定申告で本特例を適用しなかった場合は、原則として、遡っての適用申請をすることはできませんのでご注意を!
では、具体的な例を挙げてみましょう。
相続人Aさんが、父親が亡くなる10年前に3,000万円で購入した土地を相続し、父親の死後から3年後に1億円で売却したとします。売却にかかった経費は500万円、Aさんが支払った相続税は4,000万円です。(相続財産は土地のみ)
通常ならば、売却金額1億円-(購入金額3,000万円+経費500万円)=売却益6,500万円となりますから、Aさんが支払う譲渡所得税は、6,500万円×20%(長期譲渡所得)=1,300万円となります。
これに「取得費加算の特例」を適用すると、売却金額1億円-(購入金額3,000万円+経費500万円+相続税4,000万円)=売却益2,500万円となりますから、Aさんの支払う譲渡所得税は、2,500万円×20%(長期譲渡所得)=500万円となり、譲渡所得税だけでも800万円の節税になります。
税率20%は、当該土地を5年超で所有していた「長期譲渡所得」に該当するからです。これが「短期譲渡所得」(購入してから5年以下)の土地だった場合には、税率が39%となります。
注意しなくてはならないのは、長期と短期の判定です。ここでいう「5年」というのは、購入した月日から売却した月日までの期間ではありません。売却した年の1月1日の段階で5年以上(5年と1日でも可)が経っていなかった場合には、「短期譲渡所得」となってしまうのです。
それに、もうひとつ重要なポイントがあります。
前々回のコラムでもご紹介した「還付手続き」で、相続税の還付・減額を受けた場合には、譲渡所得税の修正申告も必要となるということです。
先ほどのAさんのケースで、Aさんが支払った相続税のセカンド・オピニオンを受け、4,000万円の相続税が1,500万円に減額できたとします。
その場合、Aさんが「取得費加算の特例」を適用していたならば、「譲渡所得税」の修正申告をしなくてはなりません。
Aさんの場合なら、
売却価格1億円-(購入価格3,000万円+経費500万円+相続税(更正後)1,500万円)=売却益5,000万円となりますので、譲渡所得税は5,000万円×20%=1,000万円となります。
ごく稀なケースでしょうが、「相続税の還付手続き」を代行する税理士(提携税理士に仕事を割り振る業者も含む)の中には、還付手続きを行い報酬を受け取ったら、譲渡所得税の修正申告に関しては、相続人に対しても税務署に対しても、理由はよく分かりませんが結果として修正申告を行わかった事務所もあると聞いたことがあります。
この場合の修正申告は、「相続税還付手続き」が原因で起きたものですから、委任された税理士として、譲渡所得税の修正申告までアドバイスするのは当然のことです。
このように相続では、税法でさえも複数の税目にまたがった取扱いがあります。しかし、最初から適正な相続税を申告しておけば、このような所得税の修正云々の話はなくて良かった訳です。
相続税の当初申告の段階から、相続税に精通した専門家に依頼する(或いはご自身で勉強される)ことがコストダウンの最初の1歩になると思います。
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