患者さんと医師との関係とは
-
本日は長野県佐久市にて朝から診療してきました。佐久総合病院の研修医時代から20年以上、拝診させていただいている患者さんもいらっしゃり、医師として感謝する次第です。
と申しましますのは、昔から「医師は患者さんに育てられる」と言われています。決して難解な成書や論文を読んでいるのみで育つものではありません。文献は参考にするものであり、あくまでも最重視すべきは、目前の患者さんだと言われています。
私はあまり異動せず、地域に密着し、患者さんを10年20年、切れ目なく、診療させていただきました。その結果、まだ文献に載っていない多くのことを学ばさせていただけました。これはいわゆる「エビデンス Evidence」と呼べませんが、「エクスペリエンス Experience」として、試行錯誤を経ながら、一定の患者さんのお役立ちになっているようです。
もちろん、難治性や私の診療方針に納得せず、転院された患者さんも多々いらっしゃっいました。それは残念なことですが、様々な医師の意見を参考にして、ご本人が納得する医療を受けるのが、いわゆる「インフォームド・コンセント Informed Consent」であり、最近は「シェアード・ディシジョン・メイキング Shared Decision Making」と呼ばれ、患者と医師とが、治療方針を十分に相談し、共有・決定する概念が提唱されています。
さらに精神科では病状不良のため、現実検討識を欠き、正常な判断をできなくなることも少なくないため、事前に「精神科事前指示 Psychiatric Advance Directives」を主治医と取り交わし、「覚え書き Letter of Intent」を書き残す勧めが欧米からはじまり、日本にも伝わってきています。
いずれにおきましても、「患者さんあっての医師」であることを忘れることなく、この場を借り、私自身、20年間の御礼を改めて申し上げたいと思います。