茅野 分(精神科医(精神保健指定医、精神科専門医))- コラム「インターネットによる精神障害の早期発見・早期治療(8)」 - 専門家プロファイル

茅野 分
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茅野 分

チノ ブン
( 東京都 / 精神科医(精神保健指定医、精神科専門医) )
銀座泰明クリニック 院長
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インターネットによる精神障害の早期発見・早期治療(8)

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2008-05-27 09:46

インターネットを利用した精神障害の早期発見・早期治療
このようにインターネットを利用して未治療の患者へ必要な情報を提供し、適切な治療へ導くことができる。軽症ならばメール相談のみで解決できるケースもあり、中等症以上ならば速やかな受診を指示することができる。

すでに治療中の患者へはセカンドオピニオンとして、現在の治療の是非について第三者的なアドバイスができる。原則として現在の治療・主治医を尊重し、本人の疑問や不安を解消することに努める。しかし時には明らかに不適切な治療を受けているケースも認められ、その場合は転医を勧める。

今回はメール相談のみであったが、今後は動画やビデオ通話などツールを利用することにより更に面接へ近似した情報交換が期待できる。''SNS, Social Network Services''を利用することにより自助グループや集団精神療法に準じた活動をインターネット上で展開することも可能であろう。

「ライフバランスマネジメント」 はEAP, Employee Assistance Programの立場から社員がインターネットによりメンタルヘルスの自己管理をできるよう各種教材を取り揃えている。特に「メンタフダイアリー」 はインターネット上で認知行動療法を行える画期的なプログラムである。

インターネットは精神障害の早期発見・早期治療において大変有用な手段であるが、注意しなければならない問題もある。まず自傷行為や自殺念慮が増悪している時に危機介入できる保証がない。相手は匿名で不定期に相談してくるだけである。家族や友人に連絡することもできない。このような場合、とにかく本人へ自傷や自殺を思い止まり、適切な治療や援助を受けるように勧める。治療へ確実につながるまで、いつでも相談を受け入れる姿勢を示しておくことが少しでも自傷や自殺を減らすことになりうる。

メールのみでは判断しきれない病態もある11)19)。重症の精神病や器質性の疾患は実際に面談したり、身体を診察したりしなければ確実な診断ができない。DUPを短縮するためには、速やかな診断・治療を開始しなければならない。従って、常にメール診療の限界を意識しながら対応することが望まれる。メールは便利な道具ではあるが、やはり実際に「会って話す」ことがコミュニケーションの基本であることを忘れてはならない。時にはメール上の些細な誤解が強い不信を生じることもあるし、一方的な空想や妄想に発展することもある。これらが攻撃性や集団性を帯びると「フレーミング flaming」と呼ばれるインターネット上での誹謗・中傷合戦に発展する16)。

更にコストも避けて通れない問題である18)。有用な手段でも労力・時間・費用がかかるため、サービスを継続していくためには資源を確保していく必要がある。現在のところ、健康保険は適用できない。自費診療では高額になり継続できなくなる可能性もある。広く普及させるためには、本人負担を軽減させるシステムを考案していく必要がある。(つづく)

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