寺崎 芳紀
テラザキ ヨシノリ居宅介護支援事業の現状②~第182回介護給付費分科会資料より
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こんにちは!株式会社アースソリューションの寺崎でございます。
今回は、8月19日に行われました介護給付費分科会にて、「居宅介護支援」について議論されましたので、その2回目として取り上げたいと思います。
前回を振り返りますと、事業所数や実働ケアマネ数は増えているのに、利用者増に見合った増え方になっていない、もっといえばケアマネの担い手が相対的に減っている、という話をいたしました。
また、居宅介護支援事業所の収支が、他サービスに比べ非常に収益性が悪いということにも触れました。
今回は、事業所の加算算定状況についてデータが公開されておりますので、ここでいろいろ考えてみたいと思います。
基本報酬である居宅介護支援費については、Ⅰが99.99%、Ⅱが2.46%、Ⅲが0.08%です。
これはまあ当然。ⅡやⅢを算定するのは、基本的に減算の対象となってしまいますので。
驚いたのが、その他の加算についてです。
特定事業所加算については、算定している事業所が全体に3割にも満たないという点です。
特定事業所加算Ⅰは、条件を満たすと給付管理した要介護者に対して月額500単位が加算されるのですが、取得率は1.05%(414事業所)。Ⅱは17.43%(6,852事業所)、Ⅲは10.49%(4203事業所)とのこと。
Ⅳについては、特定事業所加算を算定している事業所が対象(プラスして所定の条件を満たすことが必要)なので、ここにはプラスできません。ちなみに、Ⅳを算定する事業所はわずか0.4%(158事業所)です。
私、算定事業所がこれほど少ないとは思いませんでした。
前のコラムにも書きましたが、1事業所あたりのケアマネ数が常勤換算で2.7人ですから、理論上半分以上の事業所が特定事業所加算を算定できない状態になっているのです。Ⅲでも、主マネ1名+常勤CM2名の体制が必要ですから。
分科会の出席委員から、「特定事業所を算定しない限り、基本的に収支をプラスにするのは難しい」という意見がありました。確かにおっしゃる通りです。
しかし、現状は上記の通りです。
普通に運営していて、利益が出ないという事業を、果たして事業と言えるのでしょうか?
出席委員から別の意見として「『他サービス事業所に併設されている居宅は、単体が赤字でもグロスで利益が上がっているならそれでいいではないか』と考える厚労省官僚がいたとしたら、それは大きな間違いだ」という内容のコメントが上がっていました。
これは大いに同意します。
大儲けできなくても、普通に事業運営できれば事業所単体で利益が上がる仕組みを、もっと作っていかないといけません。また、最も大きな問題となっているケアマネの業務過多にも、AIプラン等を上手に駆使して解決していかない限り、この問題は解決できませんね。
反面、事業所の側にも再考が必要であると思います。
例えば、入院時情報連携加算(ⅠとⅡあり)の取得率は、全体の53.42%、退院・退所加算(Ⅰ~Ⅲあり)は全体の33.92%とのこと。初回加算も、67.62%の取得率です(初回加算と入院時情報連携加算・退院退所加算の同時算定は不可)。
加算を算定するとなると、いろいろ作成しなければならない書類も出てきて、大変なのはわかります。
しかし、取れる加算は積極的に算定しないとダメですよ。
初回加算についても、入院時情報連携加算や退院退所加算を優先して取得しているなら話は別ですが、そうでないにもかかわらず初回加算を取得していないとなれば、これは大問題です。事業所の怠慢と言わざるを得ません。
事業として成立させるためには、国の施策に文句を言うことも時には必要として、やはり事業者の不断の努力も必要です。
どう見ても制度上欠陥があるところは、修正していく。そのために3年ごとの見直しが行われるだけですから。
しかし、文句だけ言っても仕方がない。事業所としてできる努力は精一杯していく。
その上で、こういった分科会において業界を代表する立場の方から、積極的に進言していただきたい。
でも最近、ケアマネ協会からの提言をあまり聞きません。
今後、分科会にケアマネ協会の偉い方が出てこられるとは思いますが、是非居宅介護支援の現状と申し入れを積極的におこなっていただきたい。そうでなければ、存在する意味はありません。
業界団体は、現場の声に耳を傾け、行政やマスコミ等に代弁するのが一番の存在意義の一つなのですから・・・