寺崎 芳紀(経営コンサルタント)- コラム「療養通所介護の実態と今後の方向性」 - 専門家プロファイル

寺崎 芳紀
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寺崎 芳紀

テラザキ ヨシノリ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
株式会社アースソリューション 代表取締役
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療養通所介護の実態と今後の方向性

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2020-08-03 06:00

こんにちは!株式会社アースソリューションの寺崎でございます。


本日は、「療養通所介護」について取り上げます。


先日の介護給付費分科会で、療養通所介護についても議論されました。

情けないことに、私は療養通所介護の実態について、不勉強でよくわかりませんでした。今は基準や実態等を勉強して、少しは理解したつもりですが、それでもまだまだ不十分です。


正直申しまして、現在に至るまで療養通所介護サービス事業者様とのかかわりがありません。

全国に100ヶ所もないわけで、認知度が高くないと言わざるを得ません。


しかし、いろいろ調べていくと、サービス規模が小さいながらも地域への貢献度はハンパなく大きいことがわかってきました。


療養通所介護は、定員上限18名の地域密着型サービスになります。2018年改定で定員が9名から引き上げられました。

サービス提供時間及び報酬額は「3-6時間(1012単位)」と「6-8時間(1519単位)」となっております。地域単価にもよりますが、前者が概ね1名1万円強、後者が約1万6千円位の収入になり、これに加算がプラスされます。


2018年のデータによると事業所数が89ヶ所あり、約1600人のご利用者がいらっしゃるとのこと。介護報酬の給付額は11億5千万円位です。

ご利用者様の平均要介護度は4.4。要介護5の方が6割以上占め、重度の方が大多数であります。

ニーズは多々ありますが、中心は「経管栄養」「喀痰吸引」「服薬指導」等々、医療行為の多岐にわたります。

ご利用者様の3割が3年以上サービスを利用され、8割近いご家族様が「家族の負担が減った」等評価し、サービスの満足度はかなり高いようです。


ご利用者様の月平均利用回数は、3-6時間のサービスの場合が月0.9回、6-8時間サービスで月5.2回とのこと。


非常に簡単ではありますが、こんな状況でございます。


いろいろ資料を読んでいくと、改めて存在意義の大きさが身に染みました。

とはいえ、本当に苦労も多いようです。


まずは、人員の問題。

サービスの性質上、管理者は常勤専従の看護師である必要があります。さらに、利用者1.5人ごとに介護・看護職員を1名以上配置する必要もあり、うち1名以上は常勤専従の看護師を置かなくてはなりません。

実際は、ご利用者様のサービスの質を担保する観点もあり、看護師を2~3名は常に配置しているところが多いようです。報酬額は一般の通所サービスに比べ遥かに高いものの、定員は少ない割に人員配置を手厚くする必要がある(サービスの性質上やむを得ないが)ため、スタッフ確保や人件費コントロールは非常に難しいようです。


次に、稼働率の問題です。

これは一般の通所サービス同様、キャンセルが悩みの種になります。

特に療養通所介護の場合は、医療行為を要する重篤な方が利用されるので、どうしても急変等によるキャンセルが生じてしまいます。キャンセルが生じれば、残念ながら報酬の請求はできないので、苦しくなります。


さらに、認知度の問題もあります。

ケアマネさんのほとんどは、正直言って療養通所介護の実態などわかっていません。周辺の社会資源としてこのサービスがないわけですから、致し方がない部分もあります。しかし、ケアマネさんの認知不足はサービス事業者にとっては非常につらい。


人員の問題、利用者様の確保の問題、そして安定経営の問題。

これでは、参入事業者が増えないのも無理はありません。


国は、このサービスについて、推進する意向があるのでしょうか。

分科会の資料を読む限りでは、少ないながらも一定数の方が活用され、それがご家族の負担軽減やご本人様の状態改善につながっているので、存在意義は低くないと考えているように推察されます。


通所介護の場合はどうしても稼働率の問題にぶち当たります。

新型コロナの影響で、通所介護においては臨時的な取り扱いがなされておりますが、万一利用キャンセルが生じた場合も、在宅訪問し必要なサービスを提供できる仕組みにし、その取り組みをした場合は一定の報酬算定を可能にする等、柔軟な対応を認めてもよいのではないかと思います。


ケアマネさんの認識不足も深刻です。

今後ケアマネは、介護保険サービスはもちろんのこと、インフォーマルサービスのような社会資源についても熟知し、ケアマネジメントを実施していくことを強く求められます。

知らないでは済まされないわけです。


質の担保を図るのは、サービスである以上当然です。

しかし、介護報酬に大きく依存するこのビジネスにおいて、事業者の努力だけではどうにもならない部分については、国も真剣に議論して必要なところは見直す必要があります。事業所で働くスタッフさんは、真剣によいサービスを提供すべく頑張っていらっしゃるのです。


私は、今回のコロナ禍が、大きなヒントになるような気がいたします。




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