寺崎 芳紀
テラザキ ヨシノリ2021年度介護報酬改定の審議③「アウトカム評価とプロセス評価」
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こんにちは!株式会社アースソリューションの寺崎でございます。
以前、社会保障審議会介護給付費分科会において審議された内容について、このコラムでも書かせていただきましたが、その第3弾となります。
審議会で、介護の質をどう評価するかについての議論がなされました。
制度当初から、「要介護者が、その資する能力を最大限発揮し、その居宅において自立した生活ができるように」という文言が条文化されており、それを目指して事業所はサービスを提供し続けています。
しかし、高齢者が増え続け、社会保障費も増え続け、このままでは制度持続もおぼつかない。
制度が破綻しないようにするにはどうしたらよいか、といろいろ考えた結果、その一つとして「介護サービスの質を上げ、ご利用者様へ直接的な成果を上げられるかによって評価する」という話が出てきたのです。
これを「アウトカム評価」と称しております。アウトカムとはプロセスの逆で、要は「成果主義」ということです。平たく言えば、「結果を出したら評価するよ」という話です。
国も、これを推進するために、様々な加算を新設させました。
2018年度報酬改定においても、多くのサービスにおいて「生活機能向上連携加算」が新設されました。居宅での生活が継続できることを目指していくために、例えば訪問介護サービス等にも機能訓練の意味合いを持たせ、その取り組みに対して加算をつけるというものです。
また、デイサービスにおいては、「ADL等維持加算」が新設され、機能訓練によってADLが改善あるいは要介護度を下げる結果を出した場合に、加算をつけるというのも出てきました。
しかしながら、実際に訪問介護サービスにおいて、機能訓練のようなことを行う時間は、ほぼないといってよいでしょう。ご利用者様の中には、少ない年金で介護サービス費を賄っている方もたくさんいらっしゃいます。限られた時間の中で、最低限のサービスを行うのに精一杯な状況下で、正直機能訓練的な部分まで組み込むのは難しいと思います。
ADL等維持加算については、このコラムでも過去に触れましたが、バカバカしい程加算単位が低すぎる。
この内容では、どこも算定なんかしませんよ。
確かに「アウトカム評価」の考え方は必要です。
介護に限らず、仕事をするプロ集団ですから、成果を追求するのは当然のことであります。
しかし、審議会でも意見がありましたが、「アウトカム評価」と現行制度の最大の矛盾点は、頑張ってリハビリしてADLを上げる努力をして、実際に成果を上げると報酬が下がる、という点です。
通所系サービス、入所系サービスは、要介護度に応じた報酬体系となっております。
要介護度が下がると低い報酬となり、事業所の売上は減るのです。
現場の方々の大半が、純粋にご利用者様に元気になってもらいたい、できなかったことをできるようになってほしい、いつまでも人生を楽しんでもらいたいと願い、介護サービスを提供されています。
しかし、国の施策は、少なくとも現状のアウトカム評価への見返りとしてあまりにも不十分で、とてもじゃないが推進できるレベルではありません。
純粋なる介護従事者の気持ちに、ただ甘えているだけなのではないかと、真剣に思ってしまいます。
もっと、十分に評価してあげないと絶対にダメです。
そうは思いたくありませんが、この部分を抜本的に見直さない限り、介護人材の不足問題は永久に解決できないと、私は断言します。