間山 進也(弁理士)- コラム「音楽教室からの著作権使用料徴収」 - 専門家プロファイル

間山 進也
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間山 進也

マヤマ シンヤ
( 弁理士 )
特許業務法人エム・アイ・ピー 代表弁理士
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音楽教室からの著作権使用料徴収

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2017-09-15 15:14

<アマチュアジャズプレイヤーの弁理士の独り言です>
JASRACとヤマハ音楽振興会を含む複数の企業、団体との間の著作権使用料に関する裁判が開始されるようです。自分でもアルトサックスを演奏するので、他人事とは思われず、成り行きに関心を持っています。
争いの根拠とされている著作権法の条文は第22条で、以下の通りのものです。
『第22条 著作者は、その著作異物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上映し、又は演奏する権利を専有する。』
一方、著作権法には、以下の規定もなされています。
『第38条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。』
ところで、音楽教室では主に以下のことが行われています。
(1)音楽教室で、例えば先生が受講者に曲の演奏の仕方やリズムを理解させるために演奏する、
(2)受講者は、自ら購入した楽譜や、伴奏CDを使用して演奏し、その演奏をインストラクターに聞いてもらい、指導を受ける、
(3)音楽教室は、演奏の際に発生する音響が周囲に迷惑がかからないように減衰させる防音環境を提供し、受講者が周囲を気にせずに練習できる環境を提供する。

他にもあると思いますが、思いつく範囲内で気になる点を列挙してみました。
(1)先生、インストラクターによる演奏は、公衆に聞かせるための演奏か?
(2)先生、インストラクターは、その演奏に対する対価を受けているといえるのか?
(3)音楽教室の主催者又は経営団体は、先生又はインストラクターの演奏自体を営利目的として雇用し、先生やインストラクターの演奏の対価として報酬(給料)を提供しているのか?
(4)受講者による演奏を、防音環境の中で先生またはインストラクターに聞いてもらい、指導を受けることは、著作権法第30条において規定される個人的にまたは家庭内その他これらに準ずる限られた範囲内において使用する場合に該当するのではないか?生徒や受講者は、はたして聴衆、観客といえるのか?
(5)音楽教室の主催者又は経営団体が個人的な限られた範囲で演奏する環境を提供することが、著作権法に抵触するのか?その環境の提供行為は、著作権法とは関係ないのでは?
(6)音楽教室では、楽譜・CDの不正コピーがまかり通っているとでもいうのだろうか?(そのような事実は私が知る限りではない)
(7)音楽教室に対して使用料を徴収するのであれば公平の観点からして、学校教育内で行われる演奏(単に教科書への楽譜の掲載ではなく)例えば、音楽大学の先生が学生に対して行う模範演奏に対しても使用料を課すべきではないのか?
 音楽教室は、受講者が少なくとも著作権法第30条の適用を受ける条件にあるという点で、ダンス教室の主催者が用意した楽曲を一方的に提供する社交ダンス教室、要求された曲を要求に応じて提供するカラオケボックスや営利目的のコンサートなどとは性質が異なるものといえます。
 一方で、著作権法において教育における演奏権の規定は曖昧なところもあり、所謂学校教育での指導のための演奏であれば使用料が発生せず、同一の行為でありながら、社会教育を提供している音楽教室での指導のための演奏には使用料が発生するというのでは、公平性の問題が発生しかねないといえます。
なお、多くの受講者が存在することを以て著作権法第30条の規定に違反する可能性を指摘する声も散見されます。しかし、著作権法第30条の規定によりそれぞれ個人的に限定された範囲で著作権を使用することが許容される受講者が多数存在することと、著作権法第30条に規定される限られた範囲内における使用とは次元の異なる話です。
 さらに、違う観点からみると、楽器を販売すること自体は、著作権法とは関係ないですし、音楽教室側では、練習環境を整え、受講者に対してJASRACから許諾を受けた楽譜の購入を促してJASRACへの使用料納入、ひいては著作権者への著作権料支払いを支援しているとも言えます。その支援行為に対して著作権使用料を徴収するのでは、音楽教室側でも釈然としないものがあるでしょうし、かえって楽譜・CD販売自体を委縮させ、音楽人口の減少を招き、逆効果になるのではないでしょうか。そう考えてくると、今回の著作権についての争いは、著作権法第22条にいうところの「公衆」、「演奏」とはどのように判断するべきなのか、「音楽教育」とはどこまでの範囲を言うのか、「音楽教育における指導」が演奏に該当するのか、著作権法30条の適用を受ける要件を満たした受講生に対して防音室を提供して楽曲を演奏する環境を提供し、当該提供の対価を受ける行為が、著作権侵害といえるのかが焦点となりそうです。

 プロの演奏家を目指す人は、演奏家小・中・高等学校・大学といった学校教育の他、音楽教室等でプロの演奏家の指導の下でトレーニングします。同じ曲を練習しているのに、学校では著作権使用料が発生せず、音楽教室で先生が演奏すると著作権使用料を取られるという事態が発生するのでは、混乱が生じるでしょう。また、定年後に楽器演奏を楽しむために音楽教室で楽器演奏を習得しようとする人たちも増えていますが、これらの人たちは限られた収入の中で楽譜を購入し、近所の騒音を気にしないで練習できる環境を求めて音楽教室に参加します。文化庁を含む司法当局の判断は、学校教育と社会教育との公平性の観点や、日本の将来の音楽教育にも影響を与えかねないものとして、気になるところです。

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