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「二世帯住宅」という考え方は日本人に向いているのか

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年老いた親夫婦と息子・娘家族が一つ屋根の下で暮らす。そんな二世帯住宅を求める声は昔からあります。しかしながら、建物としてどんなに工夫して二世帯住宅を建てても、結果的に人間関係が悪化して別居してしまう、という話をよく耳にします。

そもそも、日本人に二世帯住宅という概念はふさわしいのでしょうか。


パブリックとプライベートの線引きが難しい

日本の住宅事情を見ていると、「パブリック」と「プライベート」という考え方が欧米のそれとは異なっているように感じます。

日本は玄関から入って、すぐにトイレや風呂などがあります。そして奥に行くほど「家族のプライベートルーム」であるリビングルームがある、という動線が見受けられます。

しかし諸外国の家を見ていると、様子が異なります。エントランスを入るとまず最初に広いリビングルームがあります。リビングルームが「家族のプライベートルーム」という考え方だけではなく、「皆でパーティーも楽しめるパブリックスペース」という概念がありますよね。

奥に行くほど、プライベートなベッドルームがあり、そしてその奥にバスルームがあります。つまり、バスルームというのが最もプライベートな空間なのです。

プライベートを守るという点で、日本の住宅文化は考え方を取り違えているように思います。玄関を入るとすぐにトイレや風呂がある。これではプライバシーを保つことは精神的に難しいでしょう。


二世帯住宅でプライバシーを保てるのか

そもそも諸外国には「ルームメイト」という考え方が一般的な文化として存在しています。日本はあまり一般的ではありませんね。最近、ようやく「シェアハウス」という考え方が浸透してきたように思いますが、つまり、赤の他人が一軒の家を共有するという文化が根付いており、その上で、プライバシーの尊重、アイデンティティー重視という感覚も身についているわけです。

ところが日本人の場合はどうでしょうか。人間には誰しもプライバシーの確保、アイデンティティーの確立が必要とされる中で、日本の文化は「みんな一緒に」「大人数で効率的に」という考え方が、学校教育、職場、そして家庭の中に浸透しています。

ですから、実際には親世帯と子世帯では感覚が異なるはずなのに、一つの建物をシェアして生活するということは、そもそも容易ではないわけです。

そうであるにも関わらず、経済的・健康上の理由から、二世帯住宅を安易に選択してしまうわけです。もちろん、真剣にさまざまなことを検討するのですが、「プライバシー」「アイデンティティー」という概念が思いの中に浸透していない状態であるゆえに、結果として「安易に」決定してしまうわけです。

玄関をシェアする、トイレをシェアする、お風呂をシェアする、キッチンをシェアする。共有する部分はそれぞれの二世帯住宅で異なりますが、イギリスのようにセミデタッチ(2軒分の家を結合して1棟にする)ハウスという考え方では家を建てていません。必ずどこかを共有するという考え方に基づいています。


心の優しさがプライバシーを妨げないように

「玄関を分ける」というような考え方が、「それでは人として冷たい」と感じてしまう日本人の性(さが)のようなものも存在しますが、住まいにおいて、二世帯が何かをシェアするときには、その優しさが仇となることがあります。

大切なのは、お互いを尊重し、お互いを愛し、お互いに関心を払う、ということです。決してスペースの共有ではありません。仮に家が別でも、例えば隣同士に住んでいて、頻繁に交流することもできます。逆に、建物が一緒で空気を共有していて、互いにいがみ合うという結果になることもあります。

重要なのは「どんな二世帯住宅の仕様にするのか」という考え方ではなく、「どのようにしてプライバシーを守り、アイデンティティーを確立するか」という考え方に基づいて家を建てることです。近過ぎてもいけないし、遠過ぎてもいけないわけですね。

ちょうど良い距離、というのは、よりプライベートな事柄をより奥に、そして共有すべきことをできるだけ入り口付近に配置することがカギです。もし「リビングは共有できない」と思うのであれば、そもそも玄関(建物の出入口)も分けるべきでしょう。もしかしたらカーポートすら、視覚的に分けたほうが良いかもしれません。


文化の中に「プライバシー」「アイデンティティー」という概念が浸透していない日本人にとっては、二世帯住宅は大きな挑戦となります。どれだけ工夫を凝らしても、同じ空気を共有する以上、よっぽどの大邸宅でない限り、互いの存在を毎時毎分感じることになります。

この考え方に基づいて、家づくりのプランニングを始めることをお勧めいたします。

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高級輸入住宅の敏腕営業担当として『ツーバイフォーの鬼』と呼ばれる営業成績を残しつつも、必ずしも家が大切に残されないことや幸せに直結しないことに疑問を抱き、独立後、十数回にも及ぶ欧米住宅研究旅行を実施。国産無垢材ティンバーの大空間を実現。

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