飲酒運転同乗者に賠償責任、刑事責任 - コラム - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士

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飲酒運転同乗者に賠償責任、刑事責任

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25日19時44分asahi.com記事はこう報じた。

鹿児島県奄美市で03年に起きた飲酒ひき逃げ事件に絡み、死亡した
大分県国東市の建設会社員、佐藤隆陸さん(当時24)の遺族が、事故直前
まで飲酒運転の車に同乗していた鹿児島県内の男性(25)に約5400万円の
損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、福岡高裁宮崎支部であった。
横山秀憲裁判長は男性に請求通りの賠償を命じた一審・鹿児島地裁判決を
支持し、男性の控訴を棄却した。

高裁判決は、「運転を制止すべき注意義務に違反し、事故に責任がある」
とした一審判決を追認。
横山裁判長は「飲酒による酩酊状態が事故原因の一つと推認される」と述べ、
「共同飲酒との因果関係はない」とした男性側の主張を退けた。

一審判決によると、男性は03年11月15日夕から運転者の男らと一緒に
知人宅などで酒を飲んだ。
翌16日未明、飲酒量が約6lに達した男の車に同乗。
男は車内でさらに発泡酒1缶(350ml)を飲んだ。
その後、男性が知人を見つけて下車した直後、男は市道を横断中の佐藤さんを
ひき逃げし、死亡させた。

隆陸さんの母親で原告の悦子さん(57)は「飲酒運転は重大な犯罪
ということを伝えるためにも、意義ある判決を頂いた。
同乗者が飲酒運転を止めてさえいれば、息子は死なずにすんだことを
重く受け止めてほしい」と話した。



また、逆転判決の事件を24日18時30分時事通信社ネット記事はこう報じる。

 宮城県多賀城市で2005年、酒酔い運転のRVが高校生の列に突っ込み、
18人が死傷した事故で、道交法違反(酒酔い運転ほう助)罪に問われた
同乗者の佐々木大輔被告(31)の控訴審判決が24日、仙台高裁であった。
志田洋裁判長は、罰金25万円とした一審判決を破棄、
懲役1年、執行猶予5年を言い渡した。

志田裁判長は「酒酔い運転の危険性が現実化した本件のような場合、
生じた結果は(ほう助行為についても)量刑上考慮されるべきだ」と指摘。
「罰金刑は軽きに失する」と判断した。

一審仙台地裁は昨年9月、「酒酔い運転をほう助する意思しかなく、
責任はその限度にとどまる」として罰金刑とした。

一審で懲役1年6月を求刑した検察側は、控訴審で厳罰を求め、
弁護側は「被告の同乗はほう助に当たらない」と無罪を主張していた。



両事件とも、飲酒運転による死傷事故の同乗者に対する判決である。

最初の奄美大島の事件は、事故直前に車を降りていたために、飲酒ひき逃げ
事件の幇助犯としては起訴されず、責任を問われなかった者に対して、
被害者遺族が民事責任を問い質した事件で、地裁、高裁とも、
約5400万円の損害賠償を命じている。

仙台の事件は、酒酔い運転で高校生の列に突っ込んだ事件の同乗者に対する
刑事事件である。
事故当時にも同乗していることから、幇助犯として刑事責任が問われる。
民事責任が追及されているかまでは、別件のため、記事からは判らないが、
奄美事件判決を考えれば、損害賠償責任は数段上になるものと思われる。

飲酒運転の厳罰化は間違った方向性ではない。
車が凶器となりうることを考えれば、未必の故意を適用することも
理論的には不可能ではないであろう。

一つ間違えれば人を殺しかねない凶器である以上、扱いを間違えることは
危険としかいえない。
飲酒運転は、その判断を鈍らせるものであり、車を凶器にする行為であろう。

仙台高裁の逆転判決の判断は、非常に勇気にある判断だったと思う。

前例にとらわれることなく、故意要件を充たしうることを判断したのであるから。

法の世界を市民感覚に呼び戻すことが求められる時代だからこそ、
法律家の常識だけではなく、多くの一般人にも理解できる感覚で、
法解釈を行うべきなのであろう。

そうでなければ、裁判員制度も画餅に帰すであろう。


飲兵衛の私には厳しい判決ではあるが、

「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」

絶対に守らなければならない社会を維持するためのルールなんですね。