じゃぁまたな - コラム - 専門家プロファイル

須永豪・サバイバルデザイン 
長野県
建築家
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じゃぁまたな

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■2006.03.29(wed)
オープンハウスで使った家具や
僕の工具箱を朝の家から搬出し、
最後の掃除をひとりでしていた。
約二年、この家が建ち上がるまで自分の身の回りにも色んなことがあった。
初めて須永個人が設計を受注した記念すべき仕事。
嬉しかったなぁ。
うちの中を走り回って喜んだ。
カミさんとコドモと抱き合って記念撮影もした。
産まれたばかりの我が娘の名にあやかったわけじゃないけど、
付けた名前が『朝』の家。
独立して数年、仕事の来なかったサバイバルデザイン、
僕ら一家の希望を背負った第一号。
この2年、とにかく精一杯やった。
そんなことを振り返りながら、現実に完成したこの家の
引き渡し前の最後の掃除。
さて、今日でおしまい。これでおしまい。
あしたには建て主さんが引っ越してくる。
よし、もう行こうかと思ったとき、
いままで見たこともないような夕陽が差し込んで来た。
「おまえ、きれいだなぁ・・・ホントきれいだなぁ」
家中のすべての美しいシーンを、最後に僕に見せてくれるかのように、
あらゆるところに光が回り込んだ。
撮影の時だって、オープンハウスの時だって、
こんなに美しいシーンを見せてくれなかったくせに。
別れ際、精一杯の笑顔を見せてようとしてくれてるみたいで、
胸が締め付けられる。
突然「バン!」と天井の桐板を留めていたクギが外れる音がした。
ねぇ治してよ。と駄々をこねて引き止めるかのように。
もう涙が止まらなかった。
「・・・じゃぁまたな。
おとうさん、もう行かなくちゃ」
たかが引き渡しが、こんなにも切ないものだとは、思いもよらなかった。
あしたからは、もう僕の朝の家ではない。
バイバイ朝の家。また来るからね。
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須永豪・サバイバルデザイン 

人間らしい「サバイバル」ってなんだろう?

安心して寄り掛かれるおおきな木のような存在感と、ジャングルジムのような自由さと、楽器のような豊かな響きがある空間。そういうものを、木でつくりたい。