広報パーソン必読の書 - 広報・PR・IR全般 - 専門家プロファイル

中村 英俊
株式会社第一広報パートナーズ 代表取締役 広報コンサルタント
東京都
広報コンサルタント

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閲覧数順 2024年04月18日更新

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広報パーソン必読の書

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広報パーソンにとっての必読書として長く支持されている小説に「広報室沈黙す」があります。初版は1984年に発刊されたそうで、今年がちょうど30年前にあたります。著者の高杉良氏のインタビュー記事を最近雑誌で読んでそのことを知りました。以前勤めた会社で広報部に配属された1996年に上司から勧められて読んで以来となりますが、再読してみました。
小説の内容は、大手損害保険会社を舞台に、初代広報課長に着任した主人公の木戸が上層部の権力争いに巻き込まれながらも、これに立ち向かっていく姿を描いたものです。行き詰るストーリー展開もさることながら、主人公を広報課長にして広報の立場から社内の暗部を描くという着想が新鮮で、自分が日々行っている広報の仕事に重ね合わせることができることが、読み継がれている最大の理由だと思います。
今でこそ人気職種の3K(企画、国際、広報)に入り、経営の重要なポジションの一つとして位置づけられていますが、この小説が発表された80年代前半は、総務や宣伝部門の隅に置かれて、「事なかれ広報」や「隠す広報」が当たり前の時代でした。この小説でも木戸が左遷されて広報課長になったという設定で、「こんなわけのわからん課の課長にするとは・・・」と独りごちる場面があります。
会長一派が会社を私物化している実態を経済誌がスクープしたところから話は始まります。上層部は「なぜこんな記事が出たんだ」と怒り、木戸に対してニュースソースの特定を急がせるとともに、これ以上、都合の悪い記事が出ないように書いた記者に対する懐柔を指示します。かつて「ストップワーク」と呼ばれ、都合の悪い情報がマスコミに出ないように画策するようなことが公然と行われていたと、漏れ聞いたことがありますが、まさに「隠す広報」が当時の重要な任務でした。
実は、このスクープ記事のソースは木戸課長の直属の上司であることがわかるのですが、そうした中で記者対応を迫られるわけです。木戸課長と記事を書いた記者は接触を重ねるうちに、ある種の連帯感が醸成されていきます。手心を加えてもらおうとする意図が木戸課長にないわけではないでしょうが、相手に真摯に向き合い、「正すべきところは正していくべき」とする姿勢が対峙する記者の共感を呼ぶことにつながっています。
相手の懐に飛び込むのはリスクを伴う反面、それをしなければ何も生まれません。自社の暴露記事を書いた記者に接触するのは危険な賭けといえます。木戸課長がもし、記者の立場や書かれている内容を俯瞰する目を養っていなければ、別の結果を招いたかもしれませんが、この場合はひとまずいい方向に転んでいます。
この小説を読んで全国紙の経済部長が「広報は社内の健全野党であるべき」と講演で述べていたことを思い出しました。広報には社内の問題点や上層部にとって耳の痛い情報を伝えなければならないという役割がありますが、そのことに改めて気付かされます。広報担当者は上層部に対して直言する覚悟がなければ務まりませんし、これを受け入れる度量を持つことが、経営者にも求められると思います。
橋本拓志広報コンサルタント
Twitter ID:@yhkHashimoto https://twitter.com/yhkHashimoto 
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