Airbnbは本当に必要か――それ以前に必要なこと。 - 地域活性化・町おこし - 専門家プロファイル

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閲覧数順 2016年12月08日更新

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Airbnbは本当に必要か――それ以前に必要なこと。

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日本政府は、2014年に過去最高の1341万人に達した訪日外国人旅行者数を2016年までに2000万人、2019年までに2500万人、将来的には(遅くとも2030年までには)3000万人にする目標を掲げています。訪日外国人は「輸出と同じ効果」があり、工場が海外に移転してしまった現代、とりわけ円安になると絶大な経済効果を生むことから、政府の「成長戦略」として重視されているのはご存じのとおりです。

日本人の海外旅行者数は1690万人なので、間もなく訪日外国人旅行者数に追い越されることでしょう。

日本人の国内観光旅行者数は、レジャー白書によると年間5590万人ですから、政府の目標どおりにいけば、近い将来、観光客の3人に1人は外国人客ということになります。

しかし、この数字を達成するためには、大きなハードルがあります。それは、ホテルがキャパシティオーバーに近づいていると言われていること。

その背景として、外国人旅行者の行く先は、北海道・東京・富士山・高山・京都・大阪・広島・福岡と、いわゆる「ゴールデンルート」に偏っていることが挙げられます。そのため、それらの都市はどこも部屋の取り合いになりかけているのです。そのため、政府の目標値を達成するためには、もっと全国まんべんなく、いろいろな地域にまで旅行するようにするか、人気の都市部のキャパシティを増やすことが必要なのです。

そこで登場したのが、最近流行しつつあるAirbnb。米国発・全世界で利用される空き部屋マッチングサイトです。自宅の部屋を外国人に有料で貸すことが様々な賛否を呼んでいますが、政府も規制緩和し、東京都心や京都・大阪等の都市部を国家戦略特区に指定して、10日間以上の外国人の滞在に関して、事実上「旅館業法」の適用を受けずに自宅等の部屋を有料で貸し出せるようにする予定です。

私個人的には、日本人(特に若い世代)と外国人の交流を深めるうえでよい仕組みだと思いますが、部屋を有料で貸し出すことは、旅館業法違反であるという声も少なくありません。「営業行為」ではないので違反ではないという声もありますが、「特区」に指定してOKを出すのですから、政府としては「違法(もしくは違法に近い)」と思っていると考えるのが自然ではないでしょうか。

すなわち、Airbnbや類似する仕組みは、旅館業法違反に近いものであることは自明であり、特区を指定してまで政府が推進することが是か非か、ということを問題にすべきかと思います。

その点、都市部で客室が足りないということが真実かどうか。

ホテル業はさておき、旅館業の客室稼働率は、全国平均で50%程度です。すなわち、半分は空いています。現在旅館の客室は全国で73万室ありますので、毎日36万室が空いていることになります。一部屋に2名入るとして73万人分が空いています。365日を掛けると、年間で2億6千万人分の余裕があります。3000万人来て、あとプラス1500万人が平均6泊したとして9000万人泊が必要。全国に分散してもらえさえすれば、まだまだ「どんと来い」という状況です。ただし、旅館業の廃業が増えなければですが。 

むしろ、それだけ旅館に泊まってくれると、客室稼働が上がるので、旅館業としてもたいへん有難いことで、廃業も減るはずです。 

ただ、それは全国レベルの話で、都市部は満室続きではないかという憶測もあるでしょう。それは調べればよいことですが、もしそうであれば、日本旅館協会東京支部も大阪支部も反対しないような気がします。特区指定された都市部エリアの旅館業の客室を合計すると10万室あります。客室稼働率が80%だとして、毎日2万人分が空いており、年間で730万人分の余裕があります。これを埋めることを考えるのが先決ではないでしょうか。

もちろん、政府も考えてはいるでしょう。それなら、なぜ旅館を活用することを考える以前に、特区指定をしたかということを考えれば、むしろ、Airbnb等の新しい仕組みが入ってくること自体を、いったん「特区」という鞘に納め、その間に対応を見極めようとしていると解釈することもできます。

その間、旅館業も反対だけしていればよいとは限りません。そもそも、旅館業が外国人を歓迎する態勢を十分に整えていれば一番簡単で、大きな問題は起こらないはずだからです。まずは、少なくとも客室稼働率を伸ばしたいと考える旅館であれば「一泊二食制」というガラパゴスルールをいい加減に見直したほうがが良いと思います。宿泊代の半分が夕・朝食代として含まれているというルールを外国人は理解しきれないと思います。日本人だってきっと「旅館は高い」と思っています。

ただこれは業界というより、できる旅館がどんどん進めていけばよいのでしょう。草津温泉の湯畑草庵や佳乃やといった和モダンな「素泊まり専用宿」がどんどん出てきて欲しいと思います。阿蘇内牧温泉のように、温泉街をあげて外国人素泊まり客(朝食付き)を歓迎し、街中の飲食店のメニューを全て外国語に翻訳してスマホで閲覧できるようにする温泉地もどんどん出てきてよいと思いますし、政府はそうしたエリアの後押しをしてほしいと思います。外国人従業員を雇用しやすくするような規制緩和もしてほしいと思います。

そして、全国に外国人旅行者が足を運んでいただくというのが、目指すべき理想だと思います。Airbnbはせいぜい「特区」に納め、日本に馴染むか様子見をすることが肝要かと思います。本当に周辺住民やマンションやアパートの管理組合からの苦情もなく、旅館業法適用の宿泊施設同様に安全・安心な交流ができるのかどうか、見定める必要があると思います。

ぜひ、その前に、旅館業が自ら進化すると同時に、政府には、全国に訪日外国人の足が向く仕組みを誘導することを優先していただきたいと願っています。

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(東京都 / マーケティングプランナー)
株式会社井門観光研究所 代表取締役

旅館業を知りつくした「観光地再生」の仕掛け人

20年の旅行業経験や10年にわたる旅館事業再生の現場を通して得た独自の知見とノウハウを持つ「旅館アナリスト」。「旅館業と地域との連携」や「インバウンド受入推進」等を通じて、新しい時代に対応した「地域の仕組みづくり」の実践を支援しています。

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