高原 誠(税理士)- コラム「相続前・中・後の相続対策 -時代はオーダーメイド-」 - 専門家プロファイル

高原 誠
不動産鑑定士と協働。不動産に強い相続専門の税理士です。

高原 誠

タカハラ マコト
( 東京都 / 税理士 )
フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定 税理士
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相続前・中・後の相続対策 -時代はオーダーメイド-

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相続専門税理士はこう思う 相続前・中・後の相続対策 2015-03-04 18:49

様々な視点の相続対策

 世間では、相続税の税制改正を受けていわゆる“相続対策セミナー”や“相続対策本”が隆盛を極めていますね。もちろんインターネットでも情報が氾濫しています。

 相続税の節税だったり、遺産分割対策(遺言書)に関するものだったり、内容や方法等も様々です。

 今回ご紹介するのはS県S市にお住まいのT様のケースです。

 T様は自身のお母様の万が一の時のために備え、とあるハウスメーカー主催の相続対策セミナーに出席されたそうです。税理士の講演を聞かれて、“相続対策案”を持ち帰ったものの、信託銀行ともお付き合いのあるT様は、同じ時期に信託銀行の営業マンからも“相続対策案”の提案を受けてしまいました。

“相続対策案”の提供元が違うせいでしょうか、内容も違っています。

ハウスメーカー 「駐車場や農地に建物を建てましょう!相続税や固定資産税が安くなりますよ」

●信託銀行 「不動産が多く、このままだと遺産分割で争いが生じてしまうかもしれませんね。遺言を残しましょうよ」

さらには顧問税理士だって黙っていません。

●税理士 「持っているアパートを法人化しましょうよ」

 さて、ここで首を傾げてしまったのはT様です。T様にとってはただ一つの相続なのに、勧められる対策が専門家ごとに違うのです。すべて実行するには経費もかかりますし、年老いた親を担ぎ出すにはそれぞれパワーが必要です。

 何よりも、T様にとって、これらの“相続対策案”のうちどれを優先すべきなのかは誰も助言してくれません。相続対策案の提供元の目線でしか情報がもたらされていないことに気が付かれたのです。


大切なことは“家族視点の相続対策”

 建築も遺言も法人化も、相続対策としては効果があり、それ自体は間違っているものではありません。しかし、一番の問題はその「内容や方法などがご家族(一家)の将来像に合致しているのかどうか、十分に吟味されずに、平面的にしか情報が与えられない」という点なのです。

 ご家族にとって問題点はどこにあるのか?遺産分割なのか、それとも納税資金なのか、あるいは節税なのか、まずはそこ(どこに問題があるのか?)を見極められるようになる事が相続対策のはじめの1歩です。

分類によって見えてくる対策方針

 幸いT様はご両親の財産の管理を任されていましたので、ご両親の財産の構成比や評価額といった特徴をある程度、ご存知でした。

 そこで、財産を2つに分類してもらうことにしました。

 一族の継承や未来のために①絶対に手放したくない財産、②手放すこともやむを得ない財産の2つです。そこで①の財産をどのように無事に下の世代に渡していくか、②の財産を少なくするにはどうしたらよいかを一緒に考えていくことにしました。

 その結果、

 ●代々続いてきた農家を継続したいという思いから、農地に建物は建築したくないこと。

 ●実際、そこまでアパートを建築しなくても、土地の評価を徹底的に見直すことにより相続税額は充分に抑えられること。

 ●相続財産内の土地数は十分足りており、T様以外の相続人にも相続させる土地が用意できること。それに基づき、親族内で話し合った結果、全員が満足のいく遺産分割方針が得られたこと。

 ●法人化に関しては相続開始が間もなくやってくると考えられ、現時点ではメリットが少ない(相続開始後に行うほうがメリットが多い)と考えられること。

 といったT様の相続対策を検討する上でのいくつかの重要な指針が見えてきました。

 その指針に従い、利用可能な相続対策をまとめた結果、T様は周りの意見に踊らされることなく、満足な相続対策が出来たのです。

オーダーメイドの相続対策を

 相続というのは亡くなる方の生涯の清算であると同時に、財産を引き継ぐ方やそのご家族の新たな人生のスタートでもあります。

 いざ相続が発生してしまうと、これをカバーする広範な法律に基づいた様々な手続きが短期間で必要となる上に、一度、相続が発生してしまうとやり直しはできません。

 相続とはこのような分野ですが、“相続対策方法”に唯一絶対の王道はなく、対策案毎の優劣もありません。

 何より大事なのは、画一的な相続対策を実行するのではなく、ご自身やさらに下の世代(子供や孫)のライフプランに応じたオーダーメイドの相続対策の実行なのです。


 医療の世界では当然のことになりつつある、「セカンドオピニオン(第二の専門家の意見)」や「インフォームドコンセント(正しい情報のもとでの合意)」という言葉が相続の世界でも浸透するようになってきました。

 T様のように、「自分にぴったりの相続対策はどれだろう?」と疑問に思った時には、相続の専門家へのご相談をぜひ検討してみていただきたいと思います。

因みにT様は…

 ちなみにT様。

 「餅は餅屋だ」という事でこの後すぐに顧問税理士を変更され、相続の分野は相続専門の税理士に任されたそうです。私自身も含め、税理士自身も身を引き締めなければと考えさせられたケースでした。


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