乾 喜一郎(キャリアカウンセラー)- コラム「「介護する家族は頑張りすぎちゃだめです」は、介護のプロにも…」 - 専門家プロファイル

乾 喜一郎
働く個人の側に立ち、資格や学びを活用したキャリアづくりを提案

乾 喜一郎

イヌイ キイチロウ
( キャリアカウンセラー )
『稼げる資格』 資格専門誌『稼げる資格』編集長
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「介護する家族は頑張りすぎちゃだめです」は、介護のプロにも…

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2012-11-16 20:30
昨日に続いて、『ヘルプマン』の話題です。

最新刊を読んだ続きで、連載当初のころの『ヘルプマン』を読み始めました。
考えて高校を中退し介護のプロを目指す親友・仁を追いかけて現場に飛び込んだ
主人公・百太郎が介護の仕事の喜びに目覚めるのが、1巻「介護保険制度編」。
シャンプーの後のばあちゃんの「ああ、生きててよかった」に泣きじゃくる百太郎の姿に胸が熱くなります。
2巻「在宅痴呆介護編」、3巻「介護虐待編」、4巻「高齢者性問題編」、
そして仁を主人公に新たな壁に挑む5~7巻「介護支援専門員編」・・・。

どのエピソードもおそらく、現場で丁寧に取材されていて、
福祉についてリアルに知ることができるのですが、
それよりも何よりもまず、「マンガとしておもしろい」のです。

ある巻の巻末に、作者が、介護を描きたいんじゃなく、
おもしろいマンガを描きたいと考えた舞台が、たまたま介護だったんだ、といった意味合いのお話をされていましたが、
課題にぶちあたり、体当たりでその課題に取り組む主人公が
多くのサブキャラの支援を手に入れ、何よりも当事者を味方にしてその課題を乗り越える。
まさに、<努力、友情、勝利>。 (勝利ではないエピソードもありますが)

でも、この時期のエピソードには1点、注意しなければいけないことがあります。

私がそれに気が付いたのは、1巻のAmazonのブックレビューの中の、★1つのコメントを読んだとき。

実際に介護の現場におられる方からのコメントでした。
評価されてらっしゃらないのは、内容についてではありません。
百太郎の正論に対し、「ここまでやらないとダメなのか」と、疲弊感を感じられた、とおっしゃるのです。
介護の現場を離れることを考えておられる、と。

主人公の百太郎は、たしかに率直で限度をしらなくて、
そして利用者の懐に思い切り飛び込んでいける「介護の天才」として描かれます。
ガラスの仮面なら北島マヤです。(とすると、仁は姫川亜弓、ですね)

でもそれは、マンガの罠なのを、わかって読む必要があります。
ストーリーを際立たせるためには、
悪役はより悪役らしく造形される必要がありますし、課題の状況は深刻である必要がある。
大量の取材を組み合わせ、物語を最大限効果的に活かすための、当然の手法です。

普通のマンガと違うのは、
エピソードもシチュエーションも、そして絵も、とてもリアリティを持って語られること。
現場にいらっしゃる方にとってはきっと、気持ちの動かされ方が半端ではないのかもしれません。

現実の介護の世界を知るには、あるいは、現実の介護の世界の課題を乗り越える気持ちを手に入れるには、
割り戻して考える必要があるはずです。

現実は、そんなにハッキリ、白と黒に分かれることは、きっとない。
すべては、グレー。ただし、濃淡があるグレー。
100%の悪役もいなければ、100%の熱血だっていないはずです。

こうした「割り戻し」を必要とされる部分は、最新刊の「震災編」では影をひそめます。
このエピソードの主人公の仁は、何度も無力感にさいなまれ、
そして小さな何かで復活し、また落込み・・、
でもそれが物事を少し、前へと進めるのです。

2巻のラスト近くのセリフに確か、「ご家族さんは頑張りすぎちゃだめです」とあります。

頑張りすぎちゃダメなのは、ご家族さんだけじゃない。
介護に取り組むプロの方たちもみな、「頑張りすぎちゃだめ」なんです。

『働きすぎる若者たち』は、頑張りすぎることの危うさを描いた一冊。
こちらの観点も大切です。
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