乾 喜一郎(キャリアカウンセラー)- コラム「容姿・外見をどうとらえるか~エロティック・キャピタルとビューティ・バイアス」 - 専門家プロファイル

乾 喜一郎
働く個人の側に立ち、資格や学びを活用したキャリアづくりを提案

乾 喜一郎

イヌイ キイチロウ
( キャリアカウンセラー )
『稼げる資格』 資格専門誌『稼げる資格』編集長
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容姿・外見をどうとらえるか~エロティック・キャピタルとビューティ・バイアス

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2013-12-03 22:05

<卒アルで「魅力的」な外見のコは、年収も高く、いい結婚もして人生への満足度が高い>
<身長が低く肥っている人は年収が15%低い>

身も蓋もない調査結果ですが、日本ではなく、アメリカやイギリスの話。
『エロティック・キャピタル』という本に紹介されている話です。
日本では『人は見た目が9割』という本もありましたが、
この本はこうした社会学的な調査を使って、さらに突っ込んでいきます。

ここでのエロティック・キャピタルとは、
エッチ関連に限らず、男女も問わず、愛嬌や社交スキルまで含む
総合的な「魅力」のこと。
それは他者からのサポートを呼び込むため、
新たな味方=人脈へ積み重なっていくし、
そのことで受けた刺激は、知力やコミュニケーション能力へと連なっていく。
否定できない説得力があります。
確かに、専門職として開業して成功されている方は、
見た目にも信頼感がある。
ここでいう容姿とは、決して生まれつきのものだけではありません。
スタート地点がどこかはさておき、
見た目への注力→見た目の良さ→他者からの評価→実績→能力、知識→さらなる拡張の機会→自信→見た目の良さ
適当な連鎖を書いてみましたが、
見た目を磨くこと、清潔感、しゃべり方、スキルなので、生まれつきの差はあっても
後から努力で追いつけるということでもある。

特に、例えばアメリカのような貧富や階級の格差が大きな社会で
下層階級から成功を目指すのに、学歴や資格を身につけることと、
自らの若さを活かしエロティックキャピタルを磨くことは、確かに同じこと。
そういう意味では、持っている「資産」として捉える考え方はアリです。

一方でそれは、労働市場や恋愛市場での不利が
「努力してないだけ」とされる自己責任論に簡単に直結しそう。それは、かなり嫌なことです。

そういう文脈に注目したのが、『キレイならいいのか? ビューティ・バイアス』。
これはアメリカの女性法律家の本。

容姿(肥満を含む)による差別の激しさと、
特に女性の加齢や肥満への抵抗感がどれだけヒドイ商売のネタになっているかを列挙しています。
これも、ここまでひどくはなくても、日本でもありうること。

容姿や肥満による差別と、それを生む社会の力、
男女雇用機会均等法のような法的な規制で、その流れを変えようという提案です。

でもこの2冊。敵対しあっているわけではありません。
エロティックキャピタルのほうは、世の中の今をカッコにいれたうえでの「個人の戦略」の話、
ビューティバイアスのほうは、その世の中側に注目して社会を変えようという話。

根っこは、少しでも暮らし良く、という共通の思いです。

資格や面接などでの論争や批難のしあいでも、こういうことはよくあります。
片方は、個人が少しでも居心地良く働くための戦略の話をしていて、
もう片方は、世の中の構造的な問題をどう改善するかという話をしている。

根っこが同じなら、ポジティブにとらえたらエエやん。

個人の戦略のことも、世の中への課題感も、両方大切。
目の前で問題が起こっているのに、強者の理屈をきいてる場合じゃないもの。
そんなふうに思いを強くした2冊でした。

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