藤森 哲也(不動産コンサルタント)- Q&A回答「不同沈下の責任について」 - 専門家プロファイル

藤森 哲也
将来必要なお金を把握せずに、家を買うのって怖くないですか?

藤森 哲也

フジモリ テツヤ
( 不動産コンサルタント )
株式会社アドキャスト 代表取締役
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不当沈下の瑕疵責任

住宅・不動産 住宅・不動産トラブル 2015/10/11 14:13

新築で購入後2年くらいで玄関タイルが割れるなどあって気になっていたのですが
8年で傾きがすごくなってきたので自分で測量したところ6/1000以上傾斜しており
販売施工会社で計測したところ同じく6/1000以上の傾斜を確認しJIOが地盤調査

連絡がこないので販売施工会社確認したところJIOで地盤調査で問題がない
すぐ横ののり面にはらんでるみたいなので保険は出ないとのことで
施工会社は何もできないといっています。

10年以内なので品確法の瑕疵責任にあたらないのでしょうか

noridaさん ( 神奈川県 / 男性 / 39歳 )

藤森 哲也 専門家

藤森 哲也
不動産コンサルタント

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不同沈下の責任について

2021/01/07 14:10

norida様
はじめまして、不動産コンサルティング会社、アドキャストの藤森と申します。
ご質問いただきました件ですが、地盤の強度に対して不適切な基礎の選定などが、
「建物の基礎の瑕疵※1」とされるケースがあります。
※1.現在は瑕疵担保責任ではなく契約不適合責任といいます。

東京地裁で平成24年にあった判例では、不同沈下による傾斜を、
基礎の瑕疵が原因としています。
そのうえで、補修することにより居住用として利用可能であるため契約の
解除はできないが、因果関係のある調査費用とジャッキアップによる
補修費用など2千万以上の賠償が命じられたというものです。

他にも平成20年には、軟弱地盤にべた基礎で建築された建物が半年後に
最大1000分の7の不同沈下を起こした事案で、建物解体後に適切な地盤補強を
行った上で再建築する責任(三千数百万の損害)があるとした判例もあるようです。

また、10年ほど前の判例では、約1000分の8の傾斜を「瑕疵」と判断し、
それ以下の1000分の5の傾斜であっても「瑕疵」と認定される可能性が
あるといえるような内容のものがあったと思います。

しかしながら、基礎の選定や改良工事の問題を指摘できない場合は、
単なる土地の瑕疵として扱われ、その責任期間(多くは引渡しから2年)を
経過してしまっていることがあります。

数年前の裁判例でも、中古建物の傾斜について、建築会社に補修費用の
支払いは認めたものの、建物の瑕疵及び売主の瑕疵担保責任は否定された
という判例があったと記憶しています。


つまり、建物の傾きに関してはその程度もですが、その原因究明が重要となり、
「のり面にはらんでるので保険は出ない」という言い分に対抗できるだけの、
新築住宅の構造耐力上主要な部分である基礎や基礎杭の問題を指摘できる
ことが、品確法に基づく請求には必要となってくると思われます。

先に説明しました、補修費用など2千万以上の賠償が認められた裁判でも、
当初、傾斜の原因や補修方法の調査に100万以上をかけ、そのうえで
調査費用も実損として請求していたような流れだったはずです。


そういった請求に必要なことと費用を考慮し、どこまで請求したいのか、
契約解除なのか、希望額の損害賠償金なのか、傾きの修正なのか、
完全なる建替えなのか等を明確にし、その請求が通る可能性はどの程度
ある事案なのか、最も利益となる選択肢を模索することが大切ですので、
一度、弁護士等の専門家に判断してもらう動きは必要かと感じます。

弁護士等の法の専門家と言っても得意・不得意はあります。
ここで挙げました判例などは有名なものですので、相談先の力量の判定に、
最低限こういった判例の知識があってのアドバイスがあるかどうかなどを、
判断基準にしてみては如何でしょうか。



建物の傾きには雨風の吹込みやエアコンの効き(気密性の損失)、扉の開閉
といった日常生活の支障だけでなく、それが建物の寿命や耐震性といった資産価値、
または体調不良、問題の程度によっては小さな地震でも倒壊の危険をふくみ
安全性としても精神的にも良い状況とは言えません。

ストレスの多い日々で、ネガティブな感情にもなりやすい環境と察しますが、
norida様にとってベストな判断や交渉に役立つアドバイスとなれば幸いです。
以上、ご参考になりましたでしょうか。

アドキャスト:http://ad-cast.co.jp/  藤森哲也

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