社長の給料はいくらが妥当か?
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中小・零細企業の経営者さんから頻繁に寄せられる質問に回答します。
※わかりやすくするために説明を単純化しています。
今回は、「社長の給料はいくらが妥当か?」です。
社長をはじめとする会社役員の給料(=役員報酬)は株主総会で決定されますが、株主=社長であることが多い中小・零細企業の場合、社長が自分の役員報酬を決めることがほとんどだと思います。
さて、その時、いくらにしたらよいのか?
大きく分けて3つのアプローチがあります。
・取りたい金額からのアプローチ
・会社の税金からのアプローチ
・その他のアプローチ
取りたい金額からのアプローチ
最も単純明快、かつ、おすすめのアプローチです。
いくら欲しいか、を判断基準に金額を決定します。
何をテキトーなことを、と思うかもしれません。
色々と計算式を駆使して導き出した最も節税になる金額の方がなんとなくよさそうな感じがするかもしれません。
でも思い出してください。税金にコントロールされるために社長になったんですか?
自信をもって自身の給料を決められる、その権利を小難しい計算のもと放棄しないでほしいです。
モチベーションアップのために上げるもよし、一旦少なめにして事業投資に回すもよし、ともかく小さな枠に収まるのだけはやめてほしいというのが私の願いです。
会社の税金からのアプローチ
そうは言っても会社の税金のことも考慮に入れたいという声も多くいただきます。
ごもっともです。会社の年間予測を行う上で、税金の影響は決して小さくはありません。
役員報酬を上げる→会社の利益が減る→会社の税金が減る
役員報酬を下げる→会社の利益が増える→会社の税金が増える
という関係になりますが、役員報酬を増減させた分だけ会社の税金が増減するかというと、それほど単純なものではありません。
なぜなら、会社の税金は利益(所得)に対して乗じる税率が一定(約35%)であるのに対して、役員報酬は多ければ多いほど乗じる税率が上がる(15%~55%)からです。
したがって、会社と社長を一体としてとらえると、双方の税負担が同じ35%くらいになるあたりが一番有利なところと言えます。
しかし、会社、役員個人どちらにも様々な「控除」が存在します。配偶者控除とか住宅ローン控除が有名ですね。そのため、会社・役員個人の双方の事情を考慮してシミュレーションをしないと結論が変わってくるという複雑なものになります。
そしてこれが最も難しい点ですが、シミュレーションに使う会社の年間損益予測がどれほどの精度なのかという点です。
年間損益予測の数字がずれると、当然、結果は変わります。予測がぴったり一致することはかなり稀です。
その他のアプローチ
社会には様々な優遇制度があります。住宅ローン控除の適用可否や、補助金の有無、保育園入園の可否に至るまで、「所得制限」なる基準が存在することがあり、この所得制限にひっかからない程度に役員報酬を抑えるというアプローチです。
取りたい金額を取れ、と言ってたのに枠に収めろとは矛盾しているじゃないかとの声も聞こえてきそうです。
でも、取りたい金額を取った結果、年間所得制限をたった1万円超えてしまい、月5万円の補助金をもらえなかったなんていうことになったら、それは賢い選択だったとは言えません。
その他にも、住宅ローンを組むのであれば年収は高い方が良いので計画的に役員報酬を上げておくといったようなケースもあります。
まとめ
経営者たるもの、まずは自らの報酬の希望額を自信をもって掲げていただきたいです。その上で、その報酬額にすることで極端に不利になることがないかどうかを確認してみてください。
小難しいシミュレーションは顧問税理士さんなどにお願いするとやってもらえますよ!
このコラムの執筆専門家
- 岸井 幸生
- (東京都 / 公認会計士・税理士)
- LBA会計事務所 代表
社外から会社のビジネスを支えるプロ社外役員
顧問税理士以外で何でも相談できる人が欲しい、を提供しています。クライアントの皆様と夢を共有し、ビジネスに興味をもって最適なアドバイスを行っていくことが一番の貢献です。
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