今回私が演じた「カツ丼」という劇の解釈 (元生徒達とのやり取りが新鮮で面白い♫) ① - 文化・芸術全般 - 専門家プロファイル

舞踊家(クラシックバレエ) 元プロバレリーナ
東京都
クラシックバレエ教師・振付家

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対象:文化・芸術

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今回私が演じた「カツ丼」という劇の解釈 (元生徒達とのやり取りが新鮮で面白い♫) ①

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先日「人生初の本格的な演劇の舞台デビューを終えて♫」というコラムを書いた後、観に来てくれた元生徒達からメールをもらいました♫

 

 

Subject [コラム]

 

コラムを拝見させていただきました。

エリカ先生のご感想、そして一緒に観劇した皆さんのご感想をとても楽しく読まさせていただきました。

重ね重ねになりますが、こちらこそ、素敵な舞台をありがとうございました。

 

加藤杏菜

 

 

 

Subject [コラム]

 

コラム、早速読ませていただきました!!

やはり人によって感じ方が違うのだと改めて分かりました。

その時の自分の気持ちとかでも感じ方が変わるのかな〜と思いました。

「誰が聞いても違和感の無い選曲」それは舞台の全体の完成度の中でとても大切だと気づきました。

 

あと、演劇では「言葉」で伝えるわけであって、バレエの表情とか体での表現というよりは、

本当に言葉が大事になってくることも分かりました。

エリカ先生が苦労されたことが分かりました。笑

 

実は、私のお母さんは昔からエリカ先生の踊りがとても好きで、

「先生が踊っていると、楽しそうだったり切なそうだったり、ママも勝手にそんな気分になって、

一緒に踊りたくなっちゃう!気づいたら躍ってるのよ〜笑」

と、よく言っていました。笑

 

踊りをやっていたわけではない人をそこまで世界に引き込むことができる先生の踊りですから、

表情、体の表現より言葉を信じてやるというのは新鮮なことだったのではないかと感じました。

でも本番はそんなことを一切感じさせない楽しい舞台だったので、

本当にさすがだなとコラムを読んで改めて思いました。

 

長利愛菜

 

 

 

ちなみに私は今回の舞台で「カツ丼」という劇を演じた訳ですが、この演劇を観た人の中で、「一体どのくらいの人が、この作家の伝えたい事を理解できたのだろう?」という素朴な疑問が私にはありました。

 

何故なら、私自身が一番最初に台本を読んだ時に感じた事は「演劇とは摩訶不思議な世界だな~」という事と同時に、

 

このストーリーで最後に届けられるのが、それまで届けられていた「カツ丼」ではなく「天丼」であるという所と、水洗便所の流れる音で幕という所に非常にインパクトを感じたので、そこがこのストーリーを読み解くヒントが隠されている部分だと感じられただけだったからです。

 

そしてその後2回、3回と台本を読み返す内に、「なるほど!カツ丼というのは比喩で、この登場人物の人生を乗っければ良い訳ね!」と、自分なりの納得する解釈ができた訳です。

 

ですので多分、この「カツ丼」という演劇を観た事のある人の中でも、きっと多くの方が「何のこっちゃ!?」と感じたままの人は沢山いらっしゃるのではないかと私は感じています。

 

それというのも、終わった後に観た人から私の演技に関する感想は頂きましたが、作品の内容に関して「あれはどういう意味?」という素直な質問が出ても良いのに、誰一人演じた私に話題を振るという事が無かったからです。(笑)

 

自分の中に疑問が残ったり、ストーリーに不可解なものが感じられたとしても、そういう自分を悟られない様に(?笑)、皆そこに触れない様にして、一様に寡黙になっている様な感じと言えば伝わりますでしょうか?

(^^;

 

元生徒達にも私はそんな風に感じていたので、そこで彼女達に以下の様なメールを送信してみました。

 

   ↓     ↓     ↓

 

【私から元生徒達へのメール】

 

今回の「カツ丼」という作品を観て、貴女達は作家が何が言いたいか意味は分かりましたか?

例えば一番最後、水洗便所の流れる音で終わりますが、その意味は分かりましたか?

 

自分なりの解釈があれば是非それを聞きたいし、

もしそうでなければ「分からない」と正直にお答え下さいね。(笑)

 

 

…という事で、それでは元教え子達からの返信をご紹介致します。

☆_(_☆_)_☆

 

 

 

【長利愛菜からの返信】

 

私は直感で、カツ丼=自分の心の弱さと劇を見ながら置き換えていました。

だから、水で流したのは、自分の弱い心との別れだったのかな〜っと勝手に解釈していました。

でも、たくさん疑問が出てきて、

 

エリカ先生演じるOLさんが食べたのは天丼であってカツ丼じゃなかったのはなぜか?

あの宅配のお兄さんが読んでいた手紙はOLさんが自ら書いたものだったのか?

宅配のお兄さんとOLさんとの関係はどうだったのか?

 

などなど…

 

実は、自分の解釈がおかしかったのではないかと考えていました。(笑)

自分なりには心の中で勝手に解釈していたので今回、それをご報告させていただきます。

でも今現在は作家さんが何を伝えたかったのか、しっかりとした自分の意見がないというのが現状です。(笑)

 

 

 

【私からの返信】

 

ほほほ♪

正直な感想、逆に新鮮で面白いですよ!

分かろうと分からなかろうと、そうして自分で解釈するというのが大事な事なのですから♫

 

「カツ丼」という作品は、多分人生経験から解釈が変わって来るので、

今の貴女には不可解な部分が出て来たり、疑問が出て来て当然なのです。

 

自分で考えるから、疑問も出て来るので、それは素晴らしい事なのです!

貴女の、その理解しようという心が非常に良いと感じます!

 

 

 

【長利愛菜からの返信】

 

 

初めててきちんとした演劇を観させていただいて、メールにも書かせていただいたように、

役者の方や全体の舞台に対してなどはたくさん感じることがあったのですが、

 

作品に対してこんなに「なんでだろう?どうしてだろう?」と疑問が出てくるとは思っていなくて、

自分の感性が鈍ってしまったのではないかと少し寂しく思っていたので、安心しました。(笑)

 

 

 

【私からの返信】

 

先生は貴女より長く生きているので(笑)、人生経験が豊富な分、台本を数回読み込む内に

「あぁそうか、カツ丼というのは比喩で、登場人物の人生を乗っければ良いのね!」とすぐ理解しました。

 

つまり「カツ丼」が何を指すのかが理解出来れば、全体のストーリーが見えて

「天丼」の意味も理解できるのです。

 

貴女は最後の「水に流す」という解釈がキチンと自分の中で理解できているから、大したものですよ!

ちなみに先生の解釈を聞きたいですか?(笑)

 

 

 

【長利愛菜からの返信】

 

やはり人生経験というのは何においても重要なんですね!!

是非、先生の解釈お聞きしたいです!!

 

 

 

私からの返信】

 

では解説致しましょう(笑)

これは大人のストーリーなので、実は少しエッチなお話しなのです。

 

この解説で、何か見えて来るものが貴女の中に有りますか?(笑)

無ければ次のメールで解説を続けます♫(笑)

 

 

 

【長利愛菜からの返信】

 

すみません、分かりません。

お願いします。(笑)‍

 

 

 

【私からの返信】

 

解説しても、今の貴女にピンと来るかどうか先生には分かりませんが、

では解説を続けます♫

 

人間には性欲という本能がありますね?

人間というのはとてもセクシャリティな存在でもあります。

セクシャリティというのは、赤ちゃんや子供でも実は持っている自然なものなのですけれど、

日本人は何故か隠したがります。(笑)

 

「カツ丼」はそうしたものを象徴していると先生は解釈しました。

何故なら「恋と食欲は似ています」という台詞が2回も出て来るからです。

 

恋とはセクシャリティを指しますね?

 

先生も今回初めて本格的な演劇に触れて、その作り方というのを知ったのですが、

同じ台本でも演出家により自由に解釈して良いので、今回のカツ丼のお話しは演出家の方の発想で

(多分、今回の出演者の個性に合わせた演出に変えられたのだと思います)、

初演に演じられた設定とは全然違うストーリーに仕上がっていました。

 

今回の演出では、実はあのメッセージカードや手紙を書いてカツ丼を奢っていたのは、

あの出前持ちだという設定でした。

 

ここまでで見えて来るものはありますか?

無ければ又解説を続けます♫

 

 

 

【長利愛菜からの返信】

 

難しくて、なかなか見えてきません

出前持ちとは恋の関係にあるということは分かりました。(笑)

続きをお願いします‍。

 

 

 

【私からの返信】

 

私が演じたOLは、一瞬「出前持ちじゃないのか?」と疑いながらも、

カツ丼を毎晩届けて来るのはコダマという見ず知らずの他人だと最後まで思っています。

つまり出前持ちの片思いという設定です。

 

彼女は見ず知らずの他人から毎晩決まった時間に届けられるカツ丼を、薄気味悪いと感じながらも、

美味しくて毎晩食べてしまうのです。

つまりそうした欲望に打ち勝てない女という事ですね。

 

その中には都会の中で孤独に生きている寂しさからというものもあります。

愛していないけど、人の温もり(=セックスに通じる)が欲しいみたいな心理でしょうね。

でもそれをどこかで恥じている自分もいる。だから

 

「今夜こそ持って帰って!」とか、

「ドアの前にいくつも空のどんぶりを溜めないでよ!」

「他のアパートの住人にどんな女かと思われて恥ずかしい」

 

という台詞がありますし、

 

でもカツ丼の誘惑に負けそうになったり、色々葛藤したりしていましたね?

最後の方に出て来る台詞「ダイエット」というのも、

そういうものを自分から削ぎたいという比喩だと先生は解釈しています。

 

(※ちなみにこの台詞に付いて演出家の方に、「痩せている私がダイエットしたら、骸骨になってしまうし不自然じゃないですか?(笑)」と聞いたら、「痩せているけど、もっと痩せたい病んだ女でいい」との事でした。笑)

 

出前持ちの方は、カツ丼=自分=彼女に食べられたい=セックスしたい自分という事で、

彼女がカツ丼を食べるという事は、、イコール自分が彼女に受け入れられている気がして

嬉しく感じるのです。

 

歪んでいるでしょう?(笑)

 

恋というものにも色々有って、成熟した大人になると、

純愛というより肉欲で結び付いている男女もこの世には沢山いるという事ですね。

先生はそうした恋愛は経験した事はありませんが、そうしたセックスの相性の良さで、

仲が悪いのに離れられない男女もいる様です。

 

・・・という事が大人の世界にはあるという事を理解して下さい。(笑)

 

出前持ちの方はシャイでちょっと歪んでいるので、好きな女性に直接告白する勇気が持てないので、

コダマという偽名を使い、「カツ丼」と共にメッセージカードや手紙を彼女に届けているという訳です。(笑)

 

そして「持って帰って!」とか言ってるくせに、

コダマからの書留に書かれた「カツ丼は今夜で最後」というメッセージにOLはショックを受けますね?

カツ丼を置いて出前持ちは帰ってしまうし、そこで彼女は今夜こそ食べずにふっ切ろうと決意し

水洗便所にカツ丼を流すのです。

 

では貴女に質問です。

最後に天丼が届けられて彼女は食べるのですが、どうしてそうなったか、

その意味はどういう事か分かりますか? 

 

 (※ここで一旦、彼女からの通信が一日途絶えます)

 

返信が無いので、カツ丼の解釈に貴女がショックを受けたのかなとも思いましたが、

先生的には最後まで説明させてもらわないと気持ちが悪いし、誤解されても嫌なので

解説の続きを送信しますね。

 

 「天丼」は「カツ丼」よりも値段が高くて格上という所が解釈の要です。

彼女は痩せ我慢をして、水洗便所にカツ丼を流し

「やっと自分の欲望に打ち勝てた自分」というものに安堵しながらも、

その後に一人孤独になりますよね?

 

そこで「カツ丼は今夜で最後=もう届かない」という寂しさを改めて味わうのです。

彼女は空腹に耐えきれずにお菓子を食べようとしたり、

外から聞こえる「石焼~きイモ~~~♫」の誘惑に負けそうになりながら(笑)、

でもやはり自分の「今夜は食べない」という意志を貫こうとします。

 

そうして「でも駄目よ。(食欲=性欲を)我慢しなきゃ。ダイエットするのよ!」と

痩せ我慢をし続けている時に、思いもよらなかった「天丼」が届き、彼女は驚きと共に、

そこで初めて自分の正直な気持ちを認める=ありのままの自分=食べたい自分を素直に受け入れるのです。

 

「天丼」を食べている時に、最後に水洗便所の音が流れて幕となるのは、

今まで恥ずかしいと感じて痩せ我慢していた自分を水に流して、

素直に自分のありのままを認めて受け入れた彼女=天丼を食べる彼女=成長した自分として

「生まれ変わった瞬間」を表していると私は思いました。

 

演劇は何でも有りの世界なので、解釈も個々自由で良いのです。

だから貴女が何の予備知識もなく「カツ丼」という作品を見て感じた事も、一つの解釈になるのです。

例えば私は杏菜ちゃんにも同じ質問をして、彼女の解釈を聞いたのですが、

今の彼女が感じた解釈は、それはそれで素晴らしいと感じましたよ。

若いからこその女性としての解釈や美しさを、彼女の中に見る事ができました。

 

でも人生経験や知識により解釈には幅が出て来ますね?

例えば天丼の方が値段が高くて、カツ丼より格上という事を知識として知らなければ、

この劇で作家が何を言いたいかが良く見えて来ませんよね?

 

あと性欲(大人)というものへの理解もそうですね?

 

演劇は個々の人生経験の豊富さや知識により、

解釈に深みと幅が出来てより楽しめる=イマジネーションが豊富になる分、

楽しめる世界という事になるのでしょうね。

 

そういう意味では何でも有りの世界である分、バレエよりも伝えたい事というのが

(例え今回の様に比喩というものを使った場合でも)、生身の人間の日常生活に密接した題材も多くて、

バレエよりもより直接的で生々しくなる場合が殆どでしょうね。

 

 

 

【長利愛菜からの返信】

 

部活の合宿で、携帯を預けていたので返信が遅くなってしまいました。

事前に報告せず、すみません‍。

 

正直なところ、全く想像していなかった解釈だったので、びっくりしました。

天丼を食べたことが何か表現しているのだなとは思っていたのですが、

一段階成長した自分を表現していたのだと分かってスッキリしました!

 

パッと見はコミカルな感じだったのに、こんなに難しい内容だったのですね!!

演劇は観る人によって、その作品の解釈の仕方が変わるので、

自分以外の人の意見も聞くと、さらにその作品の魅力を見つけられるのではないかと思いました。

他の演劇も観てみたいと思いました!!

 

 

 

【私からの返信】

 

いつも速攻で返信して来る貴女なので、先生はてっきり貴女がショックを受けて、

それで返信が無いのかとちょっと心配になりました。(笑)

でも貴女ももう高校生だし、この様な事も知って行く時期ではないかと思いましたので、

私の解釈をお伝えしてみました♫

 

大人ってイヤらしいでしょう?(笑)

でも人間は根本的に皆エッチなのですよ!

そうでなければ貴女も私もこの世に生まれていないのですからね~。(笑)

 

 

 

【長利愛菜からの返信】

 

(事前に返信できない事情が説明できなくて)すみませんでした‍。

大人はイヤらしいですね。(笑)

これからちょっとずつ知っていくことになると思います。(笑)

 

 

 

【私からの返信】

 

そうですよ~。

でもその内あなたも、確実にその仲間入りする(※大人に成って行く)のでごじゃりますよ。(笑)

 

でも(これはコラムにも書くつもりですが)、先生は肉欲だけで結び付く恋愛というのは、

特に女性側には、男性よりも大きなデメリットもあるのではないかなぁと思っています。

何故なら女性は「受け入れる性」だからですね。

 

 

 

【長利愛菜からの返信】

 

今の私からすると、全く考えられないですが…。(笑)

コラムじっくり読みたいと思います。

 

 

 

(※それでは次回は、別の元生徒の解釈&彼女と私のやり取りをご紹介致します♫)

(^^✿

 

 

 

 

 

 

これは食品サンプルのカツ丼(マグネット)デス♫

(^^✿

 

 

 

今回のリハーサルでは、演出家の方が「カツ丼も天丼も、本物の中身(※最後私は本当に天丼を食べるという演出というのも有って)を入れたい」との事で、

 

私は自分とパートナーが中身が入ったどんぶりの感触や天丼の食べ具合(!笑)を知る為に、毎週多めにご飯を炊いて、本物のカツ丼や天丼を作ってリハーサルしていました♫(笑)

(*^^*) ~ ✿

 

そしてリハーサル後は、毎回パートナーの方の晩ごはん用にそのカツ丼・天丼を差し上げる為に、料理好きな私は「どうせなら栄養バランスを考えて、野菜のお惣菜も作ってあげよう♫」と思ったのがキッカケで、

 

毎週リハーサルの度に(※勿論自分の晩ごはんの分も含めて)頼まれてもいないのに、パートナーや演出家の方やシナリオクラブのスタッフの方にまでお弁当を作る様になり、

 

そこから彼らの好みなどを知ったので、最後は何故か私の得意なビーガン食(ダシも植物性に拘る完全菜食)の、今回の演劇とは関係ないお弁当を作ったりして(笑)、私的には超楽しかったです♫

 

「私、今回もしかしたら演劇より、料理の方に命かけているかも!? 笑」とジョークを言ったら、お二人とも大笑いしておりました!(笑)

 

ちなみに毎回メニューの違う私のお弁当は皆さんに大変好評だった様で、「レストランが開けるほど美味しい!」言って下さいました♫

 

作り手としては、皆さんが美味しく感じて食べて下さった事に、非常に満足♫しております。(笑)

(*^^*)~✿✿✿

 

 

 

 

 

 

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長年プリマとして国内外で活躍。現役引退後は後進の指導とバレエ作品の振付けに専念。バレエ衣裳や頭飾りを作り続けて得たセンスを生かし、自由な発想でのオリジナルデザインの洋服や小物等を作る事と読書が趣味。著書に「人生の奥行き」(文芸社) 2003年