藤原 文
フジワラ アヤ幸せな離婚①
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私がお世話になった家庭裁判所では、調停室を挟むように申立人(調停を申し立てた方)控室と相手方(調停に呼ばれた方)控室が別々に設置されていました。
調停に行くとまず控室に通され、申立人、相手方が交互に調停室に呼ばれ、調停委員に対して事情を話します。
私は申立人控室、相手方控室の両方に入ったことがあります。(笑)
申立人控室は調停を申し立てた人ですから、積極的に話し合おう(戦おう?)とする雰囲気の人が多く、相手方控室は呼ばれた立場の人ですから、なんで・・とか、やだなぁ・・困ったなぁ・・という雰囲気を醸し出している方が多いです。
調停はあくまでも「第三者を交えた話し合いの場」なのですが、それぞれの控室の雰囲気は裁判の原告側、被告側といった感じでしょうか。
その日私は相手方控室にいました。
重い空気を感じながら自分の名前が呼ばれるの待っていたところ、一人の女性が入って来ました。
身体のラインにぴったり合った襟ぐり広めの黒いTシャツ、いい感じに履きこんだジーンズ、ラインストーンの入った女性らしい、華奢なサンダル。
カジュアルで女性らしい服装は、彼女の明るい、さっぱりとした雰囲気にとてもよく合っていました。
彼女の明るい表情は明らかに他の人達と違っていました。
次々と名前が呼ばれて相手方控室には彼女と私だけになりました。
すると彼女はいたずらっ子のような笑顔で私に話かけました。
「呼ばれちゃったの?」
「ええ」 私は彼女の笑顔につられて笑顔で返しました。
「いやぁ、びっくりしたよぉ。いきなり裁判所から呼び出し来るんだもん・・・」と彼女は話し始めました。
彼女は、元夫と何年も前に離婚が成立し、3年前に再婚して幸せな生活を送っていたそうです。
3か月前、元夫に引き取られていた息子が家出同然に彼女を訪ねてきました。
彼女が事情をきいたところ、元夫が再婚したが、新しい家族に馴染めないとのこと。
彼女は息子を受け入れ、一緒に暮らし始めました。
元夫は息子の希望を聞き入れ、親権を彼女に変更することと、彼女に対する養育費の支払いについて相談したいため調停を申し立てたそうです。
「今の主人と息子はウマが合って、友達みたいに仲がいいの。
今回の事情を話したら、このまま息子を引き取って一緒に住もうって」
「もう、何も問題ないんだから、電話で済んだのに。
いまさら養育費とか細かいこといいよぉ・・」
(それはよくはないと思いますが・・)
「さっき、調停室に呼ばれて、調停委員さんから元夫の言い分聞いたんだけど、全部ハイ、ハイって。
スムーズ過ぎてすぐ終わっちゃった」
その時、彼女担当の調停委員の方が、彼女を呼びに来ました。
続く・・